ドローン屋根点検の始め方|メリット・デメリット国家資格の価値を解説

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ドローン屋根点検は、建設・リフォーム業界が抱える課題を解決する成長市場です。この記事では、新規参入を検討中の事業者様や、ドローン操縦のプロとして独立したい方に向けて、事業の立ち上げから収益化のポイント、そして競合との差別化に不可欠な「国家資格」の価値まで、具体的に解説します。

この記事で分かること

  • なぜ今ドローン屋根点検が有望なビジネスなのか、その市場性と具体的な収益モデル
  • 事業化に必要な機材、許可申請、補助金活用までの具体的な7ステップ・ロードマップ
  • 競合との差別化を実現し、高単価案件の受注に繋げる「国家資格」の戦略的価値
  • 悪質業者と一線を画し、顧客から長期的に信頼される事業者になるためのポイント

 

  1. なぜ今、ドローン屋根点検が有望ビジネスなのか?

1-1. 建設業界の課題を解決する「市場性」

1-2. 2つの収益モデル(独立開業 vs 事業内導入)

  1. ドローン屋根点検のメリット・デメリット

2-1. メリット

2-2. デメリット

  1. 事業化への7ステップ・ロードマップ

3-1. STEP1: 事業計画と収益シミュレーション

3-2. STEP2: ビジネスに合った機材選定

3-3. STEP3: 飛行許可・承認の「包括申請」

3-4. STEP4: 事業用ドローン保険への加入

3-5. STEP5: 初期投資を抑える補助金・助成金の活用

3-6. STEP6: 信頼を勝ち取る報告書の作り方

3-7. STEP7: 顧客獲得のためのマーケティング

  1. プロの仕事の流れ
  2. 競合との差別化を図り、高単価案件の受注に繋げる「国家資格」の4つの戦略的価値

5-1. 価値1: 顧客からの信頼獲得

5-2. 価値2: 「受注機会」の拡大(公共事業・大手案件)

5-3. 価値3: 「コンプライアンス体制」の客観的証明

5-4. 価値4: Webサイトや名刺での「明確な優位性」

  1. 「点検商法」と一線を画すための信頼構築術
  2. さらなる事業拡大のヒント

7-1. 赤外線カメラによる付加価値提案

7-2. AI画像解析の活用

7-3. 他分野(測量・農業)への展開

  1. まとめ:確かな一歩を踏み出すために

1. なぜ今、ドローン屋根点検が有望ビジネスなのか?

なぜドローンによる屋根点検が、単なる流行ではなく、持続可能なビジネスとして有望なのでしょうか。その理由は、建設業界の根深い課題を解決するソリューションであるという点にあります。

1-1. 建設業界の課題を解決する「市場性」

熟練作業員の高齢化と担い手不足が進む一方で、労働災害、特に墜落・転落事故への対策は社会的な急務です※1。ドローンは、作業員を危険から守り、安全に、かつ正確に屋根の状態を把握するための有効な解決策の一つです。この「安全性」と「正確性」が、市場が拡大している主要な原動力となっています。

1-2. 2つの収益モデル(独立開業 vs 事業内導入)

収益モデルは大きく2つに分けられます。自社の状況に合わせて最適なモデルを検討しましょう。

  • ①独立開業モデル:

    • 概要: 個人事業主や新規法人として、ドローン点検サービスを専門に提供するモデル。
    • 収益構造: 「点検単価 × 件数」が基本。一般的な戸建て住宅の点検単価は2万円~5万円が相場です。単価3万円で月20件の点検を受注できれば、月商60万円が見込めます。
    • メリット: 身軽でスピーディーな事業展開が可能。専門性を武器に、複数の工務店やリフォーム会社と提携しやすい。
  • ②既存事業(工務店など)導入モデル:

    • 概要: 塗装会社、工務店、リフォーム会社などが、自社のサービスの一環としてドローン点検を導入するモデル。
    • 収益構造: 点検自体は低価格または無料で行い、その後の屋根修理や外壁塗装などの本工事(数百万円規模)の受注に繋げることを主目的とします。
    • メリット: 既存顧客へのアップセルや、新規顧客獲得の強力なフックになる。外注費を削減し、利益率の向上にも貢献します。

どちらのモデルを目指すかで戦略は変わります。

2. ドローン屋根点検のメリット・デメリット

事業を成功させるには、メリットは顧客への訴求ポイントとして強化し、デメリットについては事業者として適切に管理する仕組みを整える必要があります。

2-1. メリット

  1. 安全性の確保と顧客の安心感: 「作業員が屋根に登らないため、転落事故のリスクを大幅に低減できます」という安全性の提供は、顧客にとって何よりの安心材料です。
  2. 工期短縮とコスト削減: 「足場が不要なので、費用も時間も大幅に節約できます」という点は、最も分かりやすい経済的メリットです。
  3. 客観的な証拠に基づく提案: 「高画質の映像でお客様と一緒に屋根の状態を確認できるので、納得してご判断いただけます」という透明性は、顧客との信頼関係を築く上で強力な武器になります。

2-2. デメリット

  1. 天候への依存: 雨天・強風時は飛行できないため、スケジュール管理には予備日を設けるなどの工夫が必要です。顧客には事前にその可能性を伝えておきましょう。
  2. 初期投資: 高性能なドローンや関連機材、保険料など、初期投資が必要です。ただし、後述する補助金の活用で負担を軽減できます。
  3. 法規制の遵守: 航空法などの関連法規を正しく理解し、遵守する責任があります。これが、専門のスクールで体系的に学ぶ重要な理由の一つです。

3. 事業化への7ステップ・ロードマップ

アイデアを具体的な事業にするための7つのステップを解説します。

3-1. STEP1: 事業計画と収益シミュレーション

まず、前述の収益モデルに基づき、具体的な事業計画を立てます。ターゲット顧客、料金設定、月間の目標件数、年間の売上・利益目標を数値化しましょう。

3-2. STEP2: ビジネスに合った機材選定

最低でも、GPSを搭載し、風に比較的強く(風速5m/s程度まで耐えられる)、4K撮影が可能なカメラを備えたドローンを選びましょう。価格帯としては50万円以上の産業用機体が一般的です(エントリーモデルでは30万円台から入手可能ですが、業務用としては50万円~300万円程度の機体が推奨されます)。

3-3. STEP3: 飛行許可・承認の「包括申請」

住宅地での飛行は、多くの場合、人口集中地区(DID地区)上空での飛行や、人・建物から30m未満の距離での飛行に該当します。これらの飛行には国土交通省からの許可・承認が必須です。年間を通じて複数回の飛行が想定されるため、手続きを簡略化できる「包括申請」(飛行経路を特定せずに、年間を通じて特定の飛行方法についてまとめて申請する方式)を行いましょう。

関連記事:ドローン包括申請のメリット・流れ・注意点を解説【代理申請も可能】

3-4. STEP4: 事業用ドローン保険への加入

対人・対物賠償責任保険への加入は、事業運営上実質的に必須と言えます。万が一の事故に備え、1億円以上の補償がある保険が推奨されます。

3-5. STEP5: 初期投資を抑える補助金・助成金の活用

ドローン導入には、国や自治体の補助金が活用できる場合があります。代表的なものに、中小企業の新たな取り組みを支援する「事業再構築補助金※2」や、ITツール導入を支援する「IT導入補助金※3」(主にドローン関連ソフトウェアが対象)などがあります。機体購入費やスクール受講費に適用される可能性もあるため、必ず情報を確認しましょう。

3-6. STEP6: 信頼を勝ち取る報告書の作り方

撮影した写真をただ渡すだけではプロの仕事とは言えません。問題箇所に印やコメントを付け、誰が見ても劣化状況が分かる詳細な報告書を作成するスキルが、顧客満足度と次の契約に繋がります。

3-7. STEP7: 顧客獲得のためのマーケティング

自社のウェブサイトやSNSで「〇〇市 ドローン屋根点検」といった地域名を含めたキーワードで情報発信(SEO/MEO)を行うほか、地域の工務店や不動産管理会社と連携し、下請けとして点検業務を請け負うのも有効な戦略です。

4. プロの仕事の流れ

プロとして信頼される仕事をするためには、確立された業務フローに沿って作業を進めることが重要です。

  1. ステップ1:問い合わせ・ヒアリング: 顧客から問い合わせを受けたら、点検対象の建物の住所、構造、築年数、特に気にしている点などを詳細にヒアリングします。
  2. ステップ2:事前調査と飛行計画策定: Googleマップなどで現地の状況(周辺の建物、電線、交通量など)を確認し、安全な離着陸場所や飛行ルートを検討します。必要に応じて、航空法に基づく許可・承認申請を行います。
  3. ステップ3:現場での点検飛行・撮影: 当日、改めて現地の安全確認を行い、顧客に作業内容を説明した上で点検飛行を開始します。屋根全体を様々な角度から撮影し、特に劣化が見られやすい箇所(棟、谷、軒先など)は念入りにチェックします。
  4. ステップ4:報告書の作成と提出: 撮影した写真や動画を整理し、詳細な報告書を作成。顧客に提出し、映像を見せながら点検結果を分かりやすく説明します。修理が必要な場合は、具体的な工法や見積もりを提示します。

この一連の流れをスムーズに行うには、操縦技術だけでなく、顧客対応や報告書作成のスキルも求められます。

 

5. 競合との差別化を図り、高単価案件の受注に繋げる「国家資格」の4つの戦略的価値

ドローン屋根点検市場には多くのプレイヤーが参入しています。その中で顧客から選ばれる存在になるために有効な手段の一つが、ドローンの「国家資格(無人航空機操縦者技能証明)」です。

5-1. 価値1: 顧客からの信頼獲得

「国が認めたプロ」という肩書は、技術レベルを知らない顧客にとって最も分かりやすい信頼の証です。特に、高額な修理契約に繋がりうる屋根点検において、この信頼は受注を大きく左右します。

5-2. 価値2: 「受注機会」の拡大(公共事業・大手案件)

自治体の公共施設点検や、大手損害保険会社の災害調査など、コンプライアンスを重視する案件では、国家資格の保有が応募条件となるケースが増えています。無資格では、こうした高単価で安定した案件に参加できない場合があります。

5-3. 価値3: 「コンプライアンス体制」の客観的証明

資格取得の過程で航空法規を体系的に学ぶため、法令遵守意識の高い事業者であることを客観的に証明できます。

5-4. 価値4: Webサイトや名刺での「明確な優位性」

ウェブサイトや名刺に「一等/二等無人航空機操縦士在籍」と明記するだけで、無資格の競合他社との差別化が明確になります。国家資格は、単なるスキル証明にとどまらず、ビジネス成功のための「戦略的投資」と位置付けられるでしょう。

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6. 「点検商法」と一線を画すための信頼構築術

健全な事業運営のためには、業界が抱える課題にも目を向ける必要があります。その代表が、悪質な「点検商法※4」の存在です。彼らは「無料で点検します」と訪問し、偽りの報告で不要な工事契約を迫るなどして、業界全体のイメージを損なっています。

誠実な事業者として、こうした悪質業者と一線を画し、顧客からの信頼を勝ち取ることが不可欠です。

  • 透明性のある見積もり: 「一式」ではなく、項目ごとに内訳を明記した詳細な見積書を提出しましょう。
  • 詳細な報告書: 誰が見ても分かる客観的な証拠として、詳細なコメント付きの報告書を提供しましょう。
  • 契約を急がせない姿勢: 「今日契約すれば割引します」といった手法は使わず、顧客がじっくり検討する時間を提供しましょう。

こうした誠実な姿勢こそが、長期的な信頼の獲得や紹介による新たな顧客獲得へと繋がります。技術だけでなく、高い倫理観を持つことが、これからのプロには求められます。

 

7. さらなる事業拡大のヒント

屋根点検で確立した技術と信頼を元に、事業をさらに拡大させる道筋もあります。

7-1. 赤外線カメラによる付加価値提案

ドローンに赤外線カメラを搭載すれば、目視では分からない雨漏りの箇所や、太陽光パネルの異常(ホットスポット)を特定できます。これにより、点検の精度が向上し、より高単価なサービスを提供できます。

7-2. AI画像解析の活用

撮影した大量の画像をAIに解析させ、ひび割れや損傷箇所を自動で検出するサービスも登場しています。こうした最新技術を取り入れることで、報告書作成の手間を大幅に削減し、より多くの案件に対応できるようになります。

7-3. 他分野(測量・農業)への展開

ドローンの操縦技術と事業運営ノウハウは、他分野にも応用可能です。建設現場の進捗管理を行う「ドローン測量」や、農薬散布を行う「スマート農業」など、さらなる市場への展開も視野に入れられます。

8. まとめ:確かな一歩を踏み出すために

ドローン屋根点検ビジネスの成功は、操縦技術、事業運営ノウハウ、そして社会的な信頼の3つの要素に懸かっています。これら全てを効率的に獲得し、競合がひしめく市場で優位に立つための有効な選択肢の一つは、「国家資格」を取得することです。確かな一歩を踏み出し、成長市場の波に乗りましょう。

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参照・引用元一覧

  1. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト: 労働災害統計 - https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00_h30.html
  2. 事業再構築補助金 公式サイト - https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
  3. IT導入補助金2024 公式サイト - https://it-shien.smrj.go.jp/
  4. 国民生活センター 点検商法に関する注意喚起 - https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231011_1.html



この記事を書いた人

中山 慶一 中山 慶一

ドローンマスターズスクール運営元 株式会社モビリティテクノ ドローン事業部統括部長 2017年からドローン業務に従事し外注案件及び新規スクールの開校を手掛けています。