近年、大規模な自然災害の現場でドローンの活躍が目覚ましくなっています。しかし、自治体や企業の防災担当者様の中には、「具体的に何ができるのか?」「どうすれば円滑に導入できる?」「操縦士の育成や資格はどうすれば?」といった実践的な疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、災害対策としてのドローン導入に関する疑問点を解説します。
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この記事で分かること
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目次
1-1. フェーズ1: 初動対応(被害の全体像を即座に把握)
1-2. フェーズ2: 捜索・救助(人の入れない場所で命を繋ぐ)
1-3. フェーズ3: 復旧・復興(安全を確保し、未来へ繋ぐ)
5-2. 独り立ち後も安心。「困った」を即座に解決するプロのバックアップ
1. 災害現場の"空の目"となるドローン活用方法

大規模な災害が発生した際、人間が立ち入れない場所や広大なエリアの状況把握は困難を極めます。こうした状況で、ドローンはまさに「空の目」として、災害対応の各フェーズで大きく貢献します。ここでは、災害発生の初動から復旧・復興に至るまで、ドローンがどのように活用されているのかを時系列で見ていきましょう。
1-1. フェーズ1: 初動対応(被害の全体像を即座に把握)
- 迅速な被害状況の把握
災害発生直後、最も重要なのは「どこで、何が、どの程度の規模で起きているのか」を迅速に把握することです。ドローンは、人が近づけない土砂崩れの現場や、浸水した市街地の上空から高解像度の映像を撮影。道路の寸断、建物の倒壊といった被害の全体像を短時間で把握し、救助計画の策定に不可欠な情報を司令部に提供します。実際に、2024年1月の能登半島地震では、ドローンが撮影した三次元データが被害状況の迅速な共有に大きく貢献しました。※1 - 孤立地域の情報収集
地震による土砂崩れや洪水によって集落が孤立した場合、ドローンは陸路が絶たれた地域にいち早く到達し、上空からの映像により住民の安否確認や被災状況の把握を行います。スピーカーを搭載すれば、上空から避難を呼びかけたり、最新の災害情報を伝えたりすることも可能です。
1-2. フェーズ2: 捜索・救助(人の入れない場所で命を繋ぐ)
- 行方不明者の捜索
赤外線サーモグラフィーカメラを搭載したドローンは、夜間や視界が悪い状況など、人間の目では発見が困難な場合でも、人の体温を検知して行方不明者を発見できます。ただし、厚い瓦礫の下など、遮蔽物がある場合は検知に限界があります。広範囲を効率的に捜索し、生存率が高いとされる「72時間の壁」以内に発見できる可能性を高めます。 - 救援物資の輸送
医薬品や食料といった軽量な救援物資を、孤立した避難所へ届ける「空飛ぶ救急箱」としての役割も担います。能登半島地震では、実際に孤立地域の避難所へ医薬品をドローンで配送した事例が報告されており、物流が寸断された状況下での人命維持に貢献しました。※2 - 避難の呼びかけ・情報伝達
スピーカーを搭載したドローンは、特定のエリアの住民に対して、避難指示や津波情報などを音声で直接伝えることができます。地上での広報活動が困難な場合でも、上空から広範囲に呼びかけることで、一人でも多くの人を危険から遠ざけます。
1-3. フェーズ3: 復旧・復興(安全を確保し、未来へ繋ぐ)
- 危険区域の点検
損傷した橋梁やダムなど、人が近づくと二次災害の危険があるインフラ施設を、安全な距離から詳細に点検します。GPSが届かない閉鎖的な空間であっても、小型ドローンで倒壊家屋の内部調査などが可能になった事例もあります。※3 - 復興計画のための測量
レーザー測量機器(LiDAR)などを搭載したドローンで被災地を広範囲に測量し、高精度な3D地形データを作成します。このデータは、土砂の量を正確に算出したり、復興計画を立案したりするための基礎情報として活用され、迅速な復興事業を支えます。
2. なぜ災害にドローンが有効なのか?メリットと乗り越えるべき課題

ドローンが災害現場で注目されるのには明確な理由があります。しかし同時に、導入にあたって考慮すべき課題も存在します。ここでは、メリットと課題の両側面から、ドローンの有効性を深く掘り下げます。
2-1. 災害対応を変える3つのメリット
- 高い「迅速性・機動性」: 道路が寸断されても空路から障害物を乗り越え、目的地へ一直線に到達できます。ヘリコプターより小回りが利き、迅速な情報収集や物資輸送が可能です。
- 人の立ち入りが不要な「安全性」: 土砂崩れの再発が懸念される場所や倒壊の危険がある建物など、人が立ち入るには危険すぎる場所の調査を代行。救助隊員や調査員の安全を確保します。
- コスト効率: 有人ヘリコプターに比べ、機体価格、燃料費、整備費などの運用コストを低く抑えられます。限られた予算の中でも効果的な災害対策を講じることが可能になります。
2-2. 導入前に知るべき3つの課題
- 天候への依存: 雨や強風、雪といった悪天候に弱く、特に小型機は飛行が不安定になる場合があります。いかなる状況でも活用できるわけではない、という限界の認識が必要です。
- 法律・規制の遵守: ドローンの飛行には航空法などの規制が関わります。緊急時でも無許可で自由に飛ばせるわけではなく、法規制に関する正確な知識がなければ意図せず法律違反を犯すリスクがあります。
- プライバシーへの配慮: 高性能カメラが意図せず個人の住宅などを映し込む可能性があります。撮影した映像の管理や公開には、個人の尊厳を傷つけないよう最大限の配慮と厳格なルール作りが求められます。
3. 【防災担当者向け】災害対応ドローン導入・運用の3ステップ

ここでは、自治体や企業の防災担当者様が明日から着手できる、具体的な道のりを3つのステップで解説します。
3-1. Step1: 目的を定める「導入計画」
最初のステップは、最も重要な「計画」です。「ドローンで、どの災害の、どの課題を解決したいか」を明確に定義します。
- 目的の明確化: 「豪雨による河川氾濫時の、迅速な被害範囲の特定」「地震による孤立集落の安否確認」など、具体的なシナリオを想定します。
- 要件定義: 目的達成のために必要な性能(飛行時間、カメラ性能、赤外線カメラの要否など)を洗い出します。
- 予算と体制の確保: 機体購入費だけでなく、メンテナンス費、保険料、人材育成コストまで含めた予算計画を立て、組織内の運用体制(管理・操縦・情報活用)を検討します。
3-2. Step2: 最適解を選ぶ「機材選定」
計画が固まったら、それを実現する機材を選びます。「計画した要件を満たせるか」が選定のポイントです。
- カメラ・センサー類: 可視光カメラ、赤外線カメラ、レーザー測量機器(LiDAR)、スピーカーなど、目的に応じて必要な搭載機器を決定します。
- 機体性能: 想定される現場の環境(風の強さ、飛行距離)に耐えうる飛行安定性や、十分な活動時間を確保できるバッテリー性能を持つ機体を選びます。
- 運用支援システム: 映像をリアルタイムで共有するシステムや、飛行ルートを自動設定するソフトウェアなども効率的な運用に不可欠です。
3-3. Step3: プロを育てる「人材育成」
高性能な機材を揃えても、それを安全かつ効果的に操縦できる「人」がいなければ意味がありません。最後の、そして最も重要なステップです。
- 操縦士の育成: 災害現場での飛行は、天候急変や障害物など、通常とは異なる高度な技術と冷静な判断力が求められます。
- 国家資格の取得: 災害支援のような重要なミッションでは、操縦士が信頼の証である「国家資格」を保有していることが、安全運用において重要な要素となります。
- 継続的な訓練: 資格取得後も、災害現場を想定した実践的な訓練を定期的に行い、常にスキルを維持・向上させることが極めて重要です。
関連記事:【完全ガイド】ドローン操縦士になるには?資格・年収・将来性まで徹底解説
4. 【操縦士を目指す方へ】災害現場で国家資格が「信頼の証」となる3つの理由

災害支援におけるドローン活用の成否は、操縦士の腕にかかっています。そして、その信頼性と技術力を客観的に証明するものが、ドローンの国家資格制度です。なぜ今、災害現場で国家資格が重要視されるのでしょうか。
4-1. 理由1: 一刻を争う現場での「即応性」の確保
災害現場で求められる飛行(目視外飛行、夜間飛行など)の多くは「特定飛行」に該当し、通常は国の許可・承認が必要です。国家資格(二等以上)と機体認証の組み合わせにより、一部の特定飛行(DID上空、夜間、目視外、人・物件から30m未満の飛行で25kg未満の機体を使用する場合)については手続きが不要になるため、一刻を争う災害発生時に、該当する飛行形態であれば手続きを待たずに迅速にドローンを飛行させることが可能になります。
ただし、以下の飛行形態は、国家資格と機体認証があっても許可・承認が必要です。
- 空港周辺での飛行
- 地上150m以上の上空での飛行
- 催し場所上空での飛行
- 危険物の輸送
- 物件投下
- 25kg以上の機体での飛行
災害対応では、これらの飛行が必要になる場合もあるため、事前に必要な許可・承認の取得プロセスを理解しておくことが重要です。
4-2. 理由2: 体系的な「リスク管理能力」の証明
国家資格の取得プロセスを通じて、航空法規、気象、機体構造、安全管理体制といった安全運航に不可欠な知識を体系的に習得します。これにより、現場での予期せぬトラブル(電波干渉、急な天候変化など)を予測し、万が一の事態にも冷静かつ的確に対処できるリスク管理能力を証明できます。
4-3. 理由3: 組織と個人の「社会的信頼」の獲得
自治体や企業が防災活動を行う際、操縦士が国家資格を保有していることは、活動の安全性を担保し、社会的な信頼を得るための重要な要素です。万が一の事故の際にも、適切な知識・技能を有していたことを示す重要な証となり、組織としての安全運航に対する責任を果たす意思表示にもなります。
関連記事:【初心者さん必見!】ドローン資格まるわかりガイド:種類・必要性・取り方、ぜんぶ解説します!
5. プロであり続けるために!ドローンマスターズスクールの継続的スキルアップ支援

ドローンの技術や法律は日進月歩です。一度国家資格を取得しても、学びを止めればスキルは陳腐化する可能性があります。人命に関わる災害支援の現場では、常に最新・最高のスキルを維持し続けることが操縦士の責務です。
5-1. なぜ、卒業後も訓練が必要なのか
資格取得はゴールではなくスタートラインです。一度学んだ技術も、使わなければ錆びつきます。定期的な操縦訓練で基本操作を反復し、応用技術を練習する機会が不可欠です。当スクールでは、卒業生に飛行練習場を「無料」で開放しています(※要予約・機体持参)。 災害はいつ発生するか分かりません。「いざ」という時に確実に能力を発揮できるよう、定期的に操縦訓練を行い、基本操作の反復と応用技術を磨き続けられる環境を提供しています。
5-2. 独り立ち後も安心。「困った」を即座に解決するプロのバックアップ
現場に出ると、飛行申請(DIPS)の手続きや、アプリの操作方法、機体の不調など、予期せぬ疑問に直面します。 当スクールの「完全アフターフォロー制度」では、こうした実務上の疑問をいつでも現役インストラクターに相談可能です。一人で悩んで時間を浪費することなく、プロの知見を借りて即座に解決できるため、常に自信を持って現場に立つことができます。
6. ドローンの災害活用に関するFAQ

Q1. 全くの初心者ですが、災害支援に役立つようなドローンの資格は取れますか?
A1. はい、可能です。当スクールでは、初心者の方を対象としたコースから国家資格取得を目指すコースまで、段階的にスキルアップできるカリキュラムを用意しています。多くの卒業生が、未経験からスタートしてプロとして活躍しています。
Q2. 資格取得にかかる費用は、どのくらいかかりますか?
A2. 取得を目指す資格の種類(一等/二等)や、受講される方の経験によって費用は異なります。詳細な料金については、国家資格コースのページをご覧ください。
Q3. 災害対応には、どのような機体を選べば良いですか?
A3. 目的によって最適機は異なります。広範囲の状況把握なら飛行時間の長い中型機、行方不明者捜索なら赤外線カメラ搭載機が必須です。「何に使いたいか」を明確にし、必要な性能を持つ機体を選ぶことが重要です。
まとめ
本記事では、災害現場におけるドローンの多様な活用事例から、導入のメリット・デメリット、そして最も重要な人材育成と国家資格の必要性までを解説しました。ドローンは、その迅速性と安全性によって、これからの防災・減災対策において非常に有効なツールです。しかし、その性能を最大限に引き出すには、高度な知識と技術、そして強い責任感を持った操縦士の存在が欠かせません。この記事が、あなたの防災への意識を高め、次の一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
ドローンマスターズスクールの詳細
■ドローンマスターズスクールの特徴や国家資格制度について、さらに詳しく知りたい方は当スクールの「無料説明会(ドローンセミナー)」に是非ご参加下さい!
ドローンマスターズスクール一覧
DMS茨城つくば校
DMS茨城笠間校
DMS埼玉浦和校
DMS栃木宇都宮校
DMS東京足立校
DMS千葉野田校(農薬散布ドローン専門)
DMS東京秋葉原校
参照・引用元一覧
- 令和6年能登半島地震を踏まえた 有効な新技術 - 内閣府 - https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/pdf/kensho_team5_shiryo05.pdf
- 令和6年版 情報通信白書|ドローン・ロボットの活用 - 総務省 - https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd121410.html
- 小型ドローン「IBIS」を活用し「令和6年能登半島地震」の被災家屋調査支援を実施 - 株式会社Liberaware - https://liberaware.co.jp/%E5%B0%8F%E5%9E%8B%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%80%8Cibis%E3%80%8D%E3%82%92%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%97%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C6%E5%B9%B4%E8%83%BD%E7%99%BB%E5%8D%8A%E5%B3%B6%E5%9C%B0/









