ご自宅や事業所の太陽光パネル、「設置してから一度も点検していない」ということはありませんか? 実は、太陽光パネルの点検は、発電効率の維持だけでなく、FIT制度を利用している場合は法律で定められた義務でもあります。
この記事では、点検の必要性や費用相場といった基本から、注目のドローン点検のメリット、さらには点検をビジネスにしたいと考える方へのステップまで解説します。
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この記事で分かること
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目次
1-1. 改正FIT法で定められた「保守点検・維持管理」の義務
4-2. 目に見えない異常を発見する「赤外線サーモグラフィ」
6-1. なぜ今、太陽光パネル点検がビジネスチャンスなのか?
1. 太陽光パネルの点検は義務!知っておくべき法律と3つのリスク

「太陽光パネルの点検って、必ずやらないといけないの?」と思う方もいるのではないでしょうか。結論から言うと、固定価格買取制度(FIT制度)を利用している場合、出力規模にかかわらず、保守点検・維持管理は法律上の義務です。
1-1. 改正FIT法で定められた「保守点検・維持管理」の義務
2017年4月に施行された「改正FIT法(再生可能エネルギー特別措置法)」により、太陽光発電設備の適切なメンテナンスが明確に義務付けられました。
特に、出力50kW以上の産業用太陽光発電(高圧連系)の場合、経済産業省が定める「事業計画策定ガイドライン※1」において、保守点検の体制や計画を具体的に策定し、実行することが求められています。
では、10kW未満の住宅用や50kW未満の産業用(低圧連系)なら不要かというと、そうではありません。FIT制度の認定を受けている以上、これらも同様に点検義務の対象となります。法律は、私たちが安全かつ安定的に再生可能エネルギーを活用していくための重要なルールなのです。
※重要な注意点: 50kW未満でFIT制度を利用していない太陽光発電設備の場合、法律上の点検義務はありませんが、安全性の確保と発電効率の維持のため、定期的な点検は強く推奨されます。
1-2. 点検を怠ると起こる3つのリスク
法律で定められているから、という理由だけでなく、点検はあなたの資産を守るために必要です。もし点検を怠ると、次のようなリスクを引き起こす可能性があります。
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項目 |
危険度 |
内容 |
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発電量の低下 |
中 |
パネル表面の汚れや、目に見えない内部の劣化(ホットスポット)により、想定していた発電量が得られなくなり、売電収入の減少や電気代削減効果の低下に直結します。放置すると経済的損失が拡大します。 |
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故障・寿命の短縮 |
中 |
小さな不具合を放置することで、パワーコンディショナなどの主要機器にまで影響が及び、大規模な修理や交換が必要になるケースがあります。定期的な健康診断が、結果的に大きな出費を防ぎます。 |
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火災や感電、設備飛散のリスク |
高 |
パネルの配線劣化や接続部の緩みは、火災の原因となり得ます。また、架台の腐食やボルトの緩みを放置すれば、台風などの強風でパネルが飛散し、近隣に被害を及ぼす重大な事故につながる危険性があります。 |
2. いつ・何する?太陽光パネル点検の種類と頻度・方法

点検の重要性はわかったけれど、「具体的にいつ、何をすればいいの?」という疑問にお答えします。
2-1. まずは自分で!「日常点検」のチェック項目
専門家でなくても、日頃から確認できることがあります。数か月に一度、天気の良い日に、可能な範囲で以下の項目をチェックする習慣をつけましょう。
- パネル表面のチェック:
- 鳥のフンや落ち葉、砂埃などでひどく汚れている部分はないか?
- パネルにひび割れや、ガラス表面の変色はないか?
- 架台・周辺のチェック:
- 架台(パネルを支える金属の骨組み)にサビや変形はないか?
- ボルトやネジに緩んでいるように見える箇所はないか?
- パネルの周りや下に、雑草が生い茂っていないか?(特に地上設置の場合)
- パワーコンディショナのチェック:
- 運転時に異常な音や振動、異臭はしないか?
- 本体のフィルターにホコリが詰まっていないか?
これらの目視点検で異常を見つけた場合は、ご自身で対処しようとせず、必ず販売店や専門のメンテナンス業者に連絡してください。特に屋根の上での作業は大変危険です。
2-2. プロに任せるべき「定期点検」の専門的な内容
日常点検が「健康診断」だとすれば、定期点検は「人間ドック」です。業界ガイドライン(太陽光発電協会)で推奨されている頻度は「設置後1年、その後は4年に1回以上」ですが、安定した運用のためには、より頻繁な点検が望ましい場合もあります。
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点検項目 |
内容 |
なぜ必要か? |
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絶縁抵抗測定 |
パネルや配線から電気が漏れていないか(漏電)を測定します。 |
感電や火災のリスクを未然に防ぎます。 |
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IVカーブ測定(パネルの性能健康診断) |
パネル一枚一枚の発電性能をグラフ化し、性能が落ちていないか、内部に異常がないかを診断します。 |
発電量低下の原因を正確に特定し、最適な対策を講じるために必要です。 |
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赤外線サーモグラフィ診断 |
パネル表面の温度分布を赤外線カメラで撮影し、「ホットスポット」と呼ばれる異常発熱箇所を特定します。 |
目視では発見不可能な、火災に繋がる危険なセルの異常を発見できます。(詳細は4章) |
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目視・トルクチェック |
パネルの傷や破損、架台の腐食、接続箱の内部、配線の状態などを詳細に確認し、ボルトの緩みを専用工具で締め付けます。 |
物理的な破損や、台風などによる飛散事故を防ぎます。 |
3. 気になる点検費用の相場は?住宅用・産業用で比較

専門家による点検が必要なのはわかったけれど、やはり気になるのは費用です。点検費用は、主に太陽光発電の「設置容量(kW)」によって変動します。ここでは、一般的な費用相場を「住宅用」と「産業用」に分けてご紹介します。
3-1. 住宅用太陽光発電(10kW未満)の費用相場
多くのご家庭で設置されている10kW未満の住宅用太陽光発電の場合、1回あたりの点検費用は2万円〜4万円程度が相場です。
ただし、これは基本的な点検(目視、電圧測定など)の価格帯であり、前述したIVカーブ測定や赤外線サーモグラフィ診断などがオプションとなっている場合もあります。見積もりを取る際には、どの点検項目が含まれているかを必ず確認しましょう。
3-2. 産業用太陽光発電(10kW以上)の費用相場
事業用の太陽光発電は規模が大きくなるため、費用もそれに比例します。
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設置容量 |
年間メンテナンス費用の相場 |
1回あたりの点検費用(目安) |
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低圧(10kW以上50kW未満) |
10万円〜15万円前後 |
5万円〜10万円 |
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高圧(50kW以上2,000kW未満) |
50万円〜200万円前後 |
規模により大きく変動 |
特に高圧以上の大規模な発電所では、点検項目も多岐にわたり、年間の保守管理契約を結ぶのが一般的です。費用には、定期点検のほか、駆けつけ対応や除草作業などが含まれることもあります。
【費用を確認する際の注意点】
- 出張費: 遠方の業者に依頼すると、別途出張費がかかる場合があります。
- 報告書の有無: 点検内容を写真付きで詳細に報告してくれるかどうかも、業者の質を見極めるポイントです。
- 複数社から見積もりを取る: 1社だけでなく、複数の業者から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが、適正価格で質の高いサービスを受けるための鍵です。
4. ドローンを活用した太陽光パネル点検

近年、太陽光パネル点検の世界で「新常識」となりつつあるのが、ドローン(無人航空機)の活用です。
4-1. なぜドローン?従来点検との比較
ドローン点検は、特に大規模発電所において、時間・コスト・安全性の全てにおいて、従来の人による点検を大きく上回る可能性を秘めています。
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比較項目 |
ドローン点検 |
従来の人による点検 |
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時間 |
約2〜4時間(従来の約1/10に短縮)※2 |
約3〜4日(作業員3名で実施した場合) |
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コスト |
最大80% 削減(人件費・足場代削減)※3 |
高い |
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安全性 |
極めて高い(地上からの遠隔操作で完結) |
低い(転落・感電リスク) |
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精度 |
発電量 約10%改善の事例あり(異常や影をAI解析)※4 |
作業員のスキルに依存 |
ドローンの有効性は、すでに国の実証実験でも証明されています。
- 経済産業省「スマート保安」: AIとドローンを活用した点検により、配線の不具合や影の影響(シェーディング)を正確に特定。配線レイアウトの見直しを行うことで、発電量が10%以上向上した事例が報告されています。
- 自治体・公共施設での採用(香川県など): 大学や庁舎など、安全管理が厳しい公共施設の屋根点検において、「足場を組まずに安全に点検できる」としてドローンが正式採用されています。これにより、数十万円単位の足場設置コストを削減しつつ、高精度な赤外線データを取得することに成功しています。
このように、ドローン点検は「速くて安い」だけでなく、「発電効率(売電収入)を最大化する」ための投資としても選ばれています。
4-2. 目に見えない異常を発見する「赤外線サーモグラフィ」
ドローン点検の真価は、単に上空から撮影するだけではありません。最大の武器は、「赤外線サーモグラフィカメラ」を搭載できる点にあります。
太陽光パネルは、発電している部分は温度が均一ですが、内部のセルが故障したり、配線に異常があったりすると、その部分が抵抗となって異常発熱します。この目には見えない温度差を、ドローンに搭載した赤外線カメラが捉えるのです。この異常発熱箇所は「ホットスポット(パネルの異常発熱現象)」と呼ばれ、放置すると発電効率の低下はもちろん、最悪の場合は火災に繋がる極めて危険なサインです。
ドローンは、このホットスポットを上空から効率的に発見できる有効な手段の一つです。
4-3. デメリットと、それを乗り越える「専門技術」
もちろん、ドローン点検にも弱点はあります。雨や強風など、天候に左右される点はデメリットです。また、小規模な住宅用太陽光発電では、従来の点検方法と比較して劇的な時間短縮効果が得られない場合もあります。しかし、それ以上に重要なのが、「誰でもできるわけではない」という点です。
- 安全なドローンの操縦技術
- 正確な赤外線撮影を行うための知識
- 撮影した膨大なデータから異常箇所を正確に分析し、評価するスキル
- 顧客に分かりやすく報告書を作成する能力
これらの専門技術なくして、ドローン点検は成り立ちません。だからこそ、ドローン点検には専門の訓練を受けたプロフェッショナルが必要不可欠なのです。
ドローン点検に必須となる赤外線診断やデータ解析といった専門技術の習得に興味がある方は、こちらの専門資格コースで体系的に学ぶことができます。
5. 信頼できる太陽光パネル点検業者の選び方

点検の重要性が高まるにつれ、残念ながら経験の浅い業者や、高額な契約を迫る悪質な業者の存在も報告されています。大切な資産を守るパートナーとして、信頼できる業者を選ぶために、以下の5つのポイントを必ずチェックしてください。
5-1. 豊富な実績と専門性
これまでにどれくらいの点検実績があるか、特にご自身の設備(住宅用/産業用)と同規模の案件を経験しているかを確認しましょう。ウェブサイトの施工事例などが参考になります。
5-2. 必要な資格の有無
電気的な測定を行うためには、「電気工事士」の資格が必要です。また、ドローン点検を依頼する場合は、操縦者の技能証明(国家資格など)や、国土交通省への飛行許可申請の実績があるかどうかも重要な判断基準です。
5-3. 詳細で透明性のある見積もり
「点検一式」といった大雑把な見積もりではなく、「どの作業に」「いくらかかるのか」が明記されているかを確認します。追加料金が発生する可能性についても、事前に説明を求めましょう。
5-4. 損害賠償保険への加入
万が一、点検作業中に設備を破損させてしまったり、事故が発生してしまったりした場合に備え、業者が損害賠償保険に加入しているかを確認することは、重要な項目です。
5-5. 質の高い報告書
点検して終わり、ではありません。どこを点検し、どのような状態だったのか、異常があった場合はその原因と推奨される対策まで、写真付きで分かりやすく報告してくれる業者を選びましょう。報告書のサンプルを見せてもらうのも良い方法です。
6. 【事業者・独立検討者向け】ドローン点検をビジネスにするには?

ここまでは主に太陽光パネルを「所有する側」の視点で解説してきましたが、ここからは視点を変え、「点検を担う側」、つまりドローン点検を新たなビジネスにしたいと考えている方へのガイドです。
6-1. なぜ今、太陽光パネル点検がビジネスチャンスなのか?
市場は急速に拡大しています。FIT制度のもとで、日本全国に膨大な数の太陽光発電所が設置され、その多くがこれから本格的なメンテナンス期を迎えます。特に、人手不足が深刻化する中、効率的で安全なドローン点検への需要は、今後さらに高まることが予想されます。これは、ドローンスキルを持つ個人や企業にとって、非常に大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。
6-2. ドローン点検事業者に求められる「3つのスキル」
このビジネスで成功するためには、単にドローンを飛ばせるだけでは不十分です。以下の3つの専門スキルが不可欠となります。
- 高度なドローン操縦・撮影技術: パネルに対して常に一定の高度と角度を保ち、正確なデータを取得するための精密な操縦技術。そして、赤外線カメラの特性を理解し、最適な条件下で撮影するノウハウが求められます。
- データ分析と診断能力: 撮影した赤外線画像や可視光画像を解析し、それがホットスポットなのか、単なる汚れや影なのかを正確に見極める「目」が必要です。太陽光パネルの構造や故障モードに関する深い知識が問われます。
- 報告書作成とコンサルティング能力: 分析結果を顧客に分かりやすく伝え、具体的な改善策まで提案できる能力。単なる「撮影屋」で終わるか、顧客から信頼される「コンサルタント」になれるかの分かれ道です。
6-3. 信頼を勝ち取る「国家資格」と「専門資格」の違い
これらの高度なスキルを証明し、顧客からの信頼を勝ち取るために、「資格」の取得が極めて有効な戦略となります。資格は大きく「国家資格」と「専門資格」に分けられ、両者の役割は異なります。
- ドローン操縦の国家資格(運転免許に相当): 2022年12月に創設された「無人航空機操縦士」は、安全な運航管理ができる操縦者であることの公的な証明です。これはビジネスを行う上での信頼の土台となります。特に、これまで飛行が制限されていたエリアでの点検業務など、ビジネスの幅を広げる上で強力な武器となります。まずは、必須の知識と技能を証明する国家資格の取得から始めるのが王道です。
- 太陽光パネル点検の専門資格(業務特化のスキル証明): 国家資格が「運転免許」だとすれば、こちらは「特定の業務に特化した専門技能の証明」です。赤外線診断の原理、太陽光パネルの故障診断、効果的な報告書の作成方法など、より実践的な収益化スキルを習得できます。太陽光パネル点検に特化した専門技術を深く学べるコースは、他社との差別化を図り、専門家としての信頼性を高めるための有効な手段です。
全国に展開するドローンマスターズスクールでは、初心者からプロを目指す方まで、一人ひとりのレベルと目標に合わせたカリキュラムを提供しています。あなたも、急成長する市場のプロフェッショナルを目指しませんか?
7. まとめ
太陽光パネルの点検は、FIT制度を利用している場合は法律上の義務であると同時に、大切な資産の価値を長期的に維持するために不可欠な投資です。特にドローンを活用した点検は、大規模発電所を中心に、これからの時代のスタンダードとなる可能性を秘めています。点検を依頼する側も、これから点検を担う側も、正しい知識を身につけることが大切になってきます。
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DMS千葉野田校(農薬散布ドローン専門)
DMS東京秋葉原校
参照・引用元一覧
- 事業計画策定ガイドライン(太陽光発電) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_solar.pdf
- 点検時間の短縮 2MW(メガソーラー)
規模において、従来の目視点検では数日要していた作業が、ドローン活用により数時間〜半日で完了した事例に基づく。
(出典:株式会社プロジェクトワン 導入事例) - コストの削減
海外のエネルギー企業(AES Corporation)において、ドローン導入により検査コストの80%削減および利用可能時間が99%向上した事例に基づく。
(出典:エネがえる 海外事例レポート) 発電量の改善(スマート保安)
経済産業省の「スマート保安先進事例」において、ドローンとAI解析を用いて影の影響を特定し、配線レイアウトを変更した結果、発電量が10%以上向上した事例が報告されている。(出典:経済産業省「太陽光発電のスマート保安の取組み」p.8)









