目次
・物流向け
日本製ドローンの現状
2022年の国家資格制度開始でドローンの注目度も年々増していき、
趣味・仕事に活用しようという方も急増しています。
仕事に活かせるドローンで調べるとDJI製品に目が行きがちですが、
ここ数年で日本製のドローンも徐々に増え始めています。
今回は日本製ドローンの種類や用途、国家資格との関係性などに触れていこうと思います。
日本製ドローンの種類・開発メーカーは日々増加していますが、「ドローンといえばDJI」のような代表的なメーカーはまだまだ少ないのが現状です。
その理由は技術・飛行可能な場所など、さまざまありますが、日本は諸外国に比べ、法律によるドローンの制限が多いのがネックです。
しかし、大手物流業者などを中心に実証実験の回数も増えていますので、国産ドローンの活躍の場が増えるまでもう少しとも言えます。
日本製ドローンの特徴
日本製ドローンの特徴は「産業・仕事など、ひとつの分野に特化」している点です。
例えば、DJI製品は一般向けと言われているMavicでもカメラ性能・ズーム機能が優秀なので、映画・SNS向けの動画撮影、可視光での屋根・外壁点検など、1機種でも多岐にわたる分野で活用可能です。
対して日本製ドローンは「点検専用」「測量専用」「物流専用」など、業種を絞って開発されていることが多く、その分メーカーも増えてきています。
しかし、業種を絞っている分、より深く良いものの開発が進んでいますので、自身の業種・用途に合致するものを選びましょう。
日本製ドローンの用途
先述の通り、日本製ドローンは各分野に特化した作りが多いです。
各業種に分けて現在稼働しているモデルをご紹介します。
物流向け
まず多くのメーカーが開発に取り組んでいる「物流用」です。
物流は被災地や過疎地域への物資輸送のほか、2024年のトラックドライバー問題の一助になると言われており、日本で最も注目されているドローン活用分野です。
【株式会社ACSL:PF2-CAT3(第一種)】
ACSLは点検・測量・物流用ドローンを手がける日本のメーカーで、PF2-CAT3で2023年に日本で初めて第一種機体認証を取得しているため、「有人地帯における目視外飛行」=レベル4飛行に対応可能です。
基本性能は以下の通りです。
全長(展開時): 1.2m×1.1m
高さ:0.60m
最高飛行速度:水平 10m/s
最大航続時間(最大離陸重量時):17.5 分
最大ペイロード:1.0kg
最大離陸重量(ペイロード含む):9.8kg
このPF2-CAT3は2024年11月に行われた沖縄でのレベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)実証実験にて計11回の飛行に成功し、ドローン物流の有効性を証明しました。
ちなみに2024年10月31日現在、一等資格所有操縦士が対応できる第一種機体認証を取得しているのは、このPF2-CAT3のみで、ANAや日本郵便など、物流大手企業と連携して実験を進めています。
【イームズロボティクス:イームズ式E6150TC型(第二種)】
イームズロボティクスは物流機だけでなく、農業機や外付けリモートID機器など、ドローン周辺機材も開発しています。
イームズ式は物流機ではありますが、「第二種」認証機体のためレベル3、レベル3.5に対応できます。
基本性能は以下の通りです。
先述のACSL製より大型にはなりますが、ボディが大きい分、搭載可能重量6kgと大容量の輸送が可能で被災地域等での緊急を要する現場には十分の量です。
また、イームズロボティクスは一等無人航空機操縦士が対応できる、第一種認証機体も開発中ですので、完成と現場での活躍が楽しみです。
性能は以下の通りです。
全長(展開時): 2.1m×2.2m
高さ:0.75m
最高飛行速度:水平 10m/s
最大航続時間(最大離陸重量時):約35分
最大ペイロード:6kg
最大離陸重量(ペイロード含む):24kg
空撮・測量向け
【ソニー:Airpeak S1】
カメラやオーディオで有名なソニーも2021年に空撮用ドローンを開発しました。
その後、2023年に第二種機体認証を取得したことで、レベル3、レベル3.5に対応できるようになりました。
Airpeakはドローン専用のカメラではなく、市販されている一眼カメラαシリーズを搭載して撮影が可能です。
普段使っているカメラでそのまま撮影できるので、映像の色合いや癖を気にせず運用できるメリットがあります。
また、自動飛行にも対応していますので、あらかじめ飛行経路を決めておいて、映像だけでなく高画質な建築物の点検も対応可能です。
しかし、Airpeakは一部周辺アイテムやサポートを除き2025年3月に販売終了を発表していますので、導入を検討される際はお早めの対応をおすすめします。
性能は以下の通りです。
全長(展開時): 0.59m×0.51m
高さ:0.52m
最高飛行速度:水平 25m/s
最大航続時間(最大離陸重量時):約30分
最大ペイロード:2.5kg
最大離陸重量(ペイロード含む):7.5kg
【エアロセンス:エアロボウイング(第二種認証)】
エアロセンス株式会社は測量・インフラ整備サポート用機材を開発している日本企業です。
通常のマルチコプターも開発していますが、今回二種認証を受けたエアロボはVTOL(垂直離着陸型固定翼機)の形状を採用しています。
国交省が定める無人航空機の形状は「固定翼機・回転翼機・滑空機・飛行船」のいずれかになりますので、本機もしっかり該当しています。
マルチコプターとの違いは、同じバッテリー駆動ではあるものの、その形状から旅客機のように空力を利用して浮力を維持できるため、高速・長距離・広範囲の飛行・撮影が可能です。
そのため、エアロボは身近な撮影・点検よりも山間部・海域の点検・巡視など、より規模の大きい飛行範囲が対象となります。
飛行範囲は広大ですが、機体は最大約2mとコンパクトサイズかつ、VTOL機は垂直離着陸が可能なので場所を選びません。
また、ペイロードも用途に合わせて変更可能で、静止画・レーザースキャナ・マルチスペクトル・ジンバルなど、通常のドローンと同様の運用も可能です。
性能は以下の通りです。
全長(展開時): 2.1m×1.2m
高さ:0.42m
最高飛行速度:水平 100km/h
最大航続時間(最大離陸重量時):40分
最大ペイロード:1kg
最大離陸重量(ペイロード含む):10.2kg
以上が現在の代表的な日本製ドローンメーカーでした。
他にも「ドローンワークスシステム」「センチュリー」なども第二種認証取得を目指して開発を進めていますので、ぜひ動向にご注目ください。
型式認証・機体認証制度と国家資格の関係性
先述のメーカーの他にも、日本製ドローンの開発メーカーが存在しますが、
日本製ドローンを調べると必ず出てくる言葉が「型式認証・機体認証制度」です。
ドローンで事業を始めたい・国家資格を取得した時に最大のメリットを活用するには欠かせない制度ですので、ここで簡単に解説したいと思います。
型式認証・機体認証制度は、メーカーがドローンの量産を行うにあたり、「部品構成・製造ライン・ソフトウェア」など、安全性の確保に問題がないかを検査・認証を受ける制度です。
この制度は主にドローンメーカーが国に申請を行うものですが、国家資格を所有する操縦士が認証を受けた機体を使用することで最大のメリットを受けることができます。
本来、ドローンを飛行させる際は航空法で制限されている場所・方法に合わせて国交省へ申請が必要ですが、
二等資格を所有する操縦士が第二種を操縦する、一等資格を所有する操縦士が第一種・第二種を操縦する場合は
一部の申請を省略・簡略化することが可能です。
申請を省略できる申請は次の4つ。
「人口集中地区上空の飛行」「人・物との距離が30m未満の飛行」「夜間飛行」「目視外飛行」
この4つは仕事・プライベート問わず多くのユーザーが申請することが多く、ドローンを扱う現場では必ず使用する項目です。
国家資格制度が始まる目的となったひとつに「年々増加する申請件数に対して航空局職員の数が追いつかず、少しでも負担を減らすため」という観点もありますので、国家資格が始まる前からドローンを扱う方のほとんどが申請しており、1年間・日本全国の包括申請で共通した内容が多いため、省略対象になったと考えられています。
申請を簡略化できるのは以下の6つです。
「空港周辺の飛行」「上空150m以上の飛行」「イベント上空の飛行」「危険物輸送を伴う飛行」「物件投下を伴う飛行」「25kg以上の機体での飛行」
これら6つは航空局への申請の前に「飛行予定地」や「対象の空港事務所」など、事前の準備行程が多く申請から許可取得まで数ヶ月かかることもあります。
簡略化できる記入内容や箇所は申請したい場所や方法により異なりますが、これまでよりも確実に早く許可を取得できるようになります。
この6つに関しては立入措置管理措置を講じることも条件になっているので、ご注意ください。
以上合計10個の申請が簡略・省略されることにより、今までよりも素早くドローンを事業に活用しやすくなります。
ちなみにみなさんがいま最も触れることが多い「DJI」は中国企業のため、この認証制度にはまだ適応していません。
ですので、現在一等・二等資格を所有していて、DJI機体も所有している方はこれまで同様、航空法にしたがって申請を行わなければいけません。
もちろん通常の申請の際に国家資格が無駄になることはなく、操縦者情報の入力などで国家資格とDIPSが紐づいていますので、細かな操作が必要なくなります。
型式認証なし
ここまでは国家資格や第一種・第二種認証機体を中心にご紹介してきましたが、認証制度が始まる前から日本製のドローンを開発してきたメーカーやモデルもたくさんありますので、そちらもご紹介したいと思います。
【株式会社ACSL:蒼天】
蒼天は物流ドローンでご紹介したACSLが2021年に開発・発売したドローンです。
用途は固定されておらず、可視光・赤外線・高倍率ズームなど、現場に合わせてカメラの付け替えが可能です。
飛行性能も他の現行機に負けておらず、最大4kmの飛行が可能です。
また、位置情報の取得も日本の衛星「準天頂衛星みちびき」を使用しているため、他メーカーのドローンよりも精度の高い位置制御が可能です。
蒼天で注目すべきなのはセキュリティの高さです。
ドローンの活用が民間だけでなく、消防・警察・自衛隊など、日本の重要な機関でも増えており、そこで懸念されているのが、取得した情報の漏洩です。
蒼天はISO15408に基づくセキュリティ対策を施し、撮影データ・測量データ・飛行経路データなどの抜き取り、操作の則りによる意図的な事故の発生を未然に防ぐことが可能です。
より詳しい性能は以下をご覧ください。
全長(展開時): 63cm×56cm
最大航続時間(最大離陸重量時):約25分
最大離陸重量(ペイロード含む):2kg
最大飛行距離:4km
【株式会社mazex:飛助シリーズ】
株式会社mazexは農業・林業(資材運搬)・電設用ドローンの開発を行う日本のメーカーです。
農薬散布を行う「飛助(とびすけ)シリーズ」
資材運搬など林業を行う「森飛(もりと)シリーズ」
山間部での電線敷設をサポートする「延助」の3種を展開しており、すべて日本での生産・販売です。
飛助:搭載可能重量が7kg/10kg/15kgの各モデルに分かれており、圃場に合わせて最適なサイズを選択できます。
手動での操作も可能ですが、基本は自動飛行で散布を行います。
専用のアプリで圃場の面積や必要な薬剤量を指定し、最も効率の良い経路を作成、後は自動で散布が終わるのを待つだけです。
粒剤・液体のどちらもタンクの付け替えだけで変更できるので、1台導入すれば年間の作業効率を格段に上げることができます。
森飛:森飛は搭載可能重量が15kg/25kgで分かれており現場に合わせて選択可能です。
GPSやRTKなど、センサー類もmazex独自開発の物を搭載しており、資材を搭載していても流されることなく安定した飛行を実現しています。
操作は基本的に手動で行います。物資輸送は特に慎重さを求められるため、森飛は1台に2機の送信機を接続する「2オペレーション」を採用しており、ミスが許されない離陸・着陸を目視内で交代して行うことができます。
人力では陸路で80分以上かかる作業を森飛を採用した場合、積み下ろし含め5分まで短縮可能です。
作業スピードは1台で10人分と予想されています。
さらに森飛は住友林業と共同開発しており、その信頼性とコストパフォーマンスで販売数2年連続1位を記録しています。
延助:延助は他機種の搭載能力はそのままに、架線に特化したドローンです。
森飛同様、2オペレーションを採用しており、安全な長距離飛行と正確な作業が可能です。
また、延助は独自装備のおかげで物資を15kgの強さで牽引することができるため、物資が大きく揺れたり、地上の樹木や建物に接触・絡まる危険性を抑えることに成功しています。
もちろんセンサー類も優秀なので、有事の際はGPSを活用して自動帰還や物資の緊急離脱も可能です。
【株式会社Liberaware(リベラウェア):IBIS2】
株式会社Liberawareは小型ドローンを使用し、屋内や配管・工場内などの狭所の点検に特化したサービスを行う会社です。
開発しているのは約20cm四方・重さ約200gの「IBIS」です。
IBISはその小柄なボディで、人では覗き込むことすら難しい場所に入り込むことができますが、故に位置制御も含め自動飛行が難しく、FPVドローンのように移動・高度も含めすべての操作を手動で行います。
さらに、狭所点検を行う場合、複雑な構造や電波が届きにくいエリアまで離れることも想定されるので5G帯の電波を使用するため、無線資格の受験も必須になります。
また、完全目視外やシステム習熟のためにIBISは専用の機材で練習、試験で合格後の導入となります。
防水・防塵性能も優れており、メンテナンスが行き届いていない狭所も問題なく飛行可能です。
転倒時は「タートルモード」を実装しており、ドローン自身で起き上がり再度飛行も可能です。
全長(展開時): 19cm×19cm
高さ:5.8cm
最大航続時間(最大離陸重量時):11分
最大ペイロード:40g
最大可能風速:3m/s
農業機は独自の講習を受けたうえで購入可能
ここまで、多くの日本製ドローンをご紹介してきましたが、中でも導入に段階が必要なのが農業用ドローンです。
農業用ドローンは現状多くの日本メーカーが開発を進めており、独自の装備・アプリ・ソフトウェアも複数存在します。
大型機体かつ農薬を扱う以上、その扱い方を心得ていないと重大な事故につながりますので、農業ドローンを購入・活用する際はメーカー独自の講習を受ける必要があります。
代表例は以下の2つです。
①UTC認定資格:DJI AGRASシリーズを扱う際に必要な認定資格です。
4日〜5日間講習し、学科・実技講習を経て取得できます。
講習内容は農薬の種類や対象の作物に合わせた農薬の選び方、虫害の種類、AGRASアプリの使い方など、農業用ドローンに特化した内容です。
設定だけでなく、手動・自動での散布実習も行い、現場ですぐに活用できる技術を養います。
②農薬散布ドローンオペレーター:国交省認定の資格で、「FLIGHT-AG」操縦の際に必要な資格です。
民間・国家資格関係なく、ドローンの経験値によって講習機関を調整できる資格です。
FLIGHT-AGはマニュアル操作のみ・全自動飛行ありの2つのモデルから選択でき、1haを10分で散布できる散布能力、10Lのタンク容量を持ちながら、最低99万円から導入可能な比較的安価なモデルです。
これらの他にも講習を受けることで購入の権利が獲得できるメーカーなども存在しますので、用途にあわせたメーカー・スクールをご検討ください。
ちなみに、ここでご紹介しました「UTC認定資格」と「農薬散布ドローンオペレーター」はドローンマスターズスクールアグラス野田校にてご受講頂けますので、ご興味ある方はぜひお問い合わせください。
安心のサポート体制
国の認証の有無にかかわらず、日本製のドローンで安心できるのはアフターサポートです。
先述の通り、日本製ドローンは分野が特化していることもあり、その扱いも複雑化していることがあります。
そのまま納品しても、事故発生や業界が発展しないリスクもありますので、日本企業はサポートが手厚い傾向があります。
代表的なものは、納品時の初期設定から動作確認、特殊装備の取り付けなどで、メーカーごとの定期メンテナンスも行ってくれます。
もちろん、使用中の不明点や質問にも答えてくれますので、困ったことがあればすぐにメーカー・スクールを頼りましょう。
最後に
以上、今回は日本製ドローン・メーカーをご紹介しました。
現状の日本は法整備もかなり進んできてはいますが、業務用ドローンはまだ民間資格などが混在し、わかりづらい部分もあります。
しかし、産業用ドローンだからこそ事前のデモフライトや体験会で性能に触れてから導入を決めることもできますので、ぜひ一度メーカー・スクールに問い合わせてみてください。
ドローンマスターズスクールでもDJI製品をはじめ、産業用ドローン・日本製農業ドローンも扱っておりますので、ご興味ある方は説明会にお申し込みください。