近年、ドローン技術の進化とその利用範囲の拡大は、さまざまな分野で注目を集めています。
特に災害現場において、ドローンはその利便性と迅速性から重要な役割を果たすようになりました。この記事では、災害現場におけるドローンの活用方法とそのメリット、課題について詳しく解説していきます。
2.1. 情報収集とリアルタイムでの状況把握
2.2. 被災者の捜索と救助活動
2.3. 物資輸送
2.4. インフラの復旧支援
2.5.近年の活用事例
3.1. 迅速な情報収集
3.2. 人命を守る
3.3. コスト削減
4.1. バッテリー寿命
4.2. 天候や環境の影響
4.3. 無線通信の問題
4.4. セキュリティとプライバシー
4.5. 法的規制と運用ルール
4.6.パイロット不足
5.1. 自動飛行とAI技術の融合
5.2. ドローンの群体運用
5.3. 法整備と国際協力の強化
1. ドローンの基本的な特徴と活用分野
災害時においては、ドローンの特性が非常に効果的に活かされる場面が多いです。
例えば、災害現場では迅速かつ正確な情報収集が求められますが、
ドローンはそのニーズに対して非常に適しているのです。
2. 災害現場でのドローン活用方法
2.1. 情報収集とリアルタイムでの状況把握
災害発生時、最も重要なのは現場の状況を迅速に把握することです。特に、地震や津波、火災などで道路が寸断されたり、アクセスが困難な場合、従来の方法では現場に到達するのに時間がかかります。ドローンは、空から現場をリアルタイムで監視することができるため、迅速に状況を把握することが可能です。
2.2. 被災者の捜索と救助活動
ドローンは、被災地の広範囲にわたる捜索活動を行う際にも大きな力を発揮します。
特に山間部や都市部の崩壊した建物など、目視での捜索が困難な場所では、ドローンが上空から映像を提供することで、迅速に被災者の位置を特定することが可能となります。
ドローンに搭載されたカメラや赤外線センサーは、夜間でも高精度な映像を取得できるため、暗闇や悪天候でも捜索が可能です。さらに、ドローンにはGPS機能が搭載されており、被災者の正確な位置を特定したり、救援隊への指示をリアルタイムで送信したりすることもできます。
2.3. 物資輸送
災害時には、被災地への物資輸送が非常に重要です。しかし、道路が寸断されると、通常の交通手段では物資を届けるのが難しくなります。ドローンは、空を飛ぶことができるため、地上の交通状況に影響されることなく、迅速に物資を届けることができます。
特に医薬品や食料、応急処置キットなど、緊急の物資を迅速に届けるために、ドローンは非常に有用です。例えば、災害後に孤立した地域への物資配送をドローンで行う試みは、すでに世界中で行われています。ドローンは、空港や救援基地から被災地へ、迅速かつ確実に物資を届けることができるため、災害救助活動の重要な一翼を担っています。
2.4. インフラの復旧支援
災害によって破壊されたインフラ(道路、橋、電力網、水道管など)の点検や復旧作業も、ドローンの得意分野です。ドローンに搭載されたカメラやセンサーを使用することで、被災したインフラの状況を短時間で把握し、修復が必要な箇所を迅速に特定することができます。
特に、広範囲にわたるインフラの復旧作業においては、ドローンが非常に効率的に機能します。ドローンを用いたインフラ点検により、人的資源を有効に活用し、現場の安全を確保しながら作業を進めることができます。
2.5.近年の活用事例
昨年1月に発生した能登半島の地震でもドローンが各分野で活用されていました。
・被害状況確認
DJI製産業ドローンを用いて火力発電所の倒壊・損傷状況の撮影。
大規模設備の倒壊を確認。
・土砂災害範囲の確認
一般向けドローンを用いて土砂崩れによる河川の埋没・家屋浸水の状況を把握。
測量用ドローンを用いて地上で計測不能な崩落範囲を計測。
3Dモデルに変換し、応急対応を実施。
・携帯電話回線の電波中継
光ファイバーケーブルをドローンで持ち上げ、地上100m程度で空中の基地局として半径数km程度の通信サービスエリア確保を実現。
課題であるバッテリーは有線給電にすることで解決。
本件の飛行は緊急用務空域内として国交省が特別に許可を出しています。
上記のほか、能登半島全域で「砂防調査」「港湾調査」「河川調査」が行われ、
行政各機関のほか、国から要請を受けたドローン事業社や開発メーカーも現地入りし、被災状況確認に協力しました。
3.ドローンの活用によるメリット
3.1. 迅速な情報収集
災害発生直後には、被災地の状況を迅速に把握することが最も重要です。ドローンは、現場に到達するまでの時間を大幅に短縮することができ、リモートで映像を送信することによって、迅速な情報収集を可能にします。これにより、救援活動が早期に開始でき、被災者への支援が迅速に行えるようになります。
3.2. 人命を守る
危険な環境での作業は、救助隊員やボランティアの命を危険にさらす可能性があります。ドローンを使うことで、危険な場所へのアクセスを減らし、人的リソースを守りながら作業を行うことができます。また、ドローンによる捜索は、高速で広範囲をカバーできるため、救助活動の効率を大きく向上させます。
3.3. コスト削減
ドローンは、従来のヘリコプターや人力による調査に比べて、はるかにコストが低く抑えられるというメリットがあります。特に、短期間で多くの情報を収集することができるため、経済的な負担を軽減しつつ、効率的に救援活動を行うことができます。
4. ドローン活用の課題
ドローンの活用には、いくつかの課題も存在します。
4.1. バッテリー寿命
ドローンは、バッテリーで動作しているため、バッテリーが切れると飛行を続けることができません。災害現場では、長時間の飛行が必要になることが多いため、バッテリーの持続時間を延ばす技術開発が求められています。
ドローンのバッテリー寿命は、災害現場での運用において大きな課題です。特に広範囲をカバーし続けるためには、長時間飛行できる性能が求められますが、現在の技術では限界があります。そのため、災害時においても飛行時間の制約が問題となり、効率的な運用を妨げることがあります。ドローンのバッテリー寿命を延ばすための技術革新が今後の課題です。
4.2. 天候や環境の影響
災害現場では、風雨や降雪、濃霧など、過酷な気象条件が頻繁に発生します。ドローンはこれらの悪天候に影響を受けやすく、特に強風や雨の中では飛行が難しくなることがあります。例えば、台風の接近時や豪雨の際には、ドローンの安定性が低下し、操作が困難になる可能性があります。これを解決するためには、より堅牢で高機能なドローンの開発が必要です。
4.3. 無線通信の問題
ドローンの運用には、無線通信を用いて操作やデータの送信が行われますが、災害現場では通信インフラが破壊されることがあります。特に都市部での災害では、建物の影響や地下での通信が途絶えることがあり、ドローンの運用に支障をきたす可能性があります。そのため、通信が途絶えた場合に自動的に帰還する機能や、通信環境に依存しない飛行技術の開発が求められます。
4.4. セキュリティとプライバシー
ドローンは、映像やデータをリアルタイムで送信するため、その利用におけるセキュリティやプライバシーの問題が懸念されます。特に災害現場では、救援活動を支援する目的で撮影される映像やデータに関して、関係者のプライバシーを侵害しないように慎重に取り扱う必要があります。また、悪意のある第三者による不正アクセスやデータの盗難を防ぐために、高度なセキュリティ技術を組み込むことが重要です。
4.5. 法的規制と運用ルール
もし災害が発生し、現場に向かう準備ができていたとしても、法律によって飛行が制限されている場合がありますので、以下を参考に注意してください。
・航空法(緊急用務空域)
まずは航空法の制限空域のひとつである「緊急用務空域」です。
この空域は大規模な土砂災害や山火事が発生した際に国交省から設定される空域です。
発表は国交省のホームページ、公式X(旧Twitter)で行われ、設定後は該当エリアが飛行禁止となります。
緊急用務空域は事故発生後に突然設定されますので、空港周辺のようにGPS等を用いてドローンの飛行性能そのものに制限はかからないため、各操縦士の自主的な飛行中止が求められます。
緊急用務空域は2021年初頭に、消防のヘリが山火事の消火作業中に現場と関係のないドローンが発見され、消火作業が数時間中止されるというトラブルが発生し、そこから3か月で急遽設定された比較的新しい空域です。
また、この空域では自衛隊・消防・警察等、関係各機関が状況確認のために特別に飛行させる場合がありますが、その妨げになりますので一般の操縦士が接近して飛行させないよう注意してください。
・小型無人機等禁止法
この法律は首相官邸や各省庁など、国の重要な施設が設定されています。
上記のような施設のほか、オリンピック等の国際的なイベントにも特別に設定される場合があります。
災害の規模にもよりますが、関係各機関の待機所や対策本部としてこちらも突然設定される可能性もありますので、飛行アプリの地図を確認し侵入しないよう注意してください。
・地元警察・消防・自衛隊の指示
法律で禁止エリアが設定されていない場合でも、現地の関係各機関の指示に従ってください。
4.6.パイロット不足
災害現場のほか、一般の空撮や点検でもドローンパイロットが不足しているのが業界全体の課題です。
2025年末には民間資格の効力が無くなると発表されていますので、国家資格取得の需要が高まっています。
各市町村の防災対策課や法人での国家資格取得が増加しており、すぐに災害現場には参加しなくとも、
自治体で管理している建物の点検や行政イベントの撮影など、ドローンそのものの活用が進んでいるようです。
5. ドローン活用の未来
5.1. 自動飛行とAI技術の融合
未来のドローンには、より高度な自律飛行技術が組み込まれると予想されています。現在でも一部のドローンにはAIを搭載して自動で障害物を避けたり、ルートを最適化したりする機能がありますが、今後はさらに進化し、災害現場での状況判断をAIが行い、最適な救援活動を自動で指示できるようになるでしょう。
例えば、ドローンが被災地の状況をリアルタイムで分析し、最も効率的なルートを選んで捜索や物資の配送を行うことが可能になると、救援活動のスピードと精度が飛躍的に向上します。これにより、ドローンが災害時の重要な救援ツールとしてさらに定着することが期待されます。
5.2. ドローンの群体運用
もう一つの大きな進展として、複数のドローンが連携して一つの大きなタスクをこなす「群体運用」があります。群体運用は、個々のドローンが協力し合って、広範囲の捜索や物資配送、さらにはインフラ点検などを同時に行うことを可能にします。これにより、救援活動の効率は飛躍的に向上し、大規模な災害でも迅速に対応することができるようになります。
群体運用には、ドローン間の通信や協調飛行が必要ですが、これを実現するための技術は着実に進歩しています。今後は、より多くのドローンが連携し、災害現場での作業を協力して行うシーンが増えていくでしょう。
5.3. 法整備と国際協力の強化
ドローンの活用が広がる中で、国際的な協力や法整備の重要性も高まっています。災害支援活動は国を超えて行われることが多いため、ドローンの利用に関する国際的なルール作りが必要です。また、災害時の支援活動を迅速に行うために、ドローン技術を持つ国々の協力体制が重要になります。
例えば、国際的なドローン飛行ルールの整備や、災害時の緊急支援チームがドローンを活用するためのガイドラインの共有が進むことで、災害支援の効率が一層向上するでしょう。
6. 結論
ドローンは、災害現場における重要なツールとして、今後ますますその活用が広がると予想されます。情報収集や被災者の捜索、物資配送など、多岐にわたる分野で活躍できるドローンは、災害対応を迅速かつ効率的に行うために欠かせない存在となっています。
一方で、バッテリー寿命や悪天候、通信環境などの課題もありますが、これらの問題に対する技術的な解決が進めば、さらに多くの災害現場でドローンが活用されることは間違いありません。ドローン技術の進化とともに、災害時の救援活動は一層スピーディかつ効果的になり、被災者の救命率や支援の迅速性を高めることができるでしょう。
未来に向けて、ドローンは単なる技術革新にとどまらず、人命を守るための重要な手段として、災害対応の最前線で活躍し続けることが期待されています。