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ドローンの操作はなにが一番便利?
国家資格制度が始まって早くも2年が経ち、趣味・仕事など用途を問わず資格取得者が急激に増加しました。
2年を経過しても必ず頂く質問が「ドローンは操作が難しそう」「自動化するからパイロットはいらなくなるんでしょ?」など、みなさん基本的な操作が気になるようです。
そこで今回は、基本に立ち返ってドローンの操作方法を復習してみたいと思います。
【手動操作】
まずは基本中の基本、手動操作です。
最近はAIの発達によって完全自動の小型ドローンも増えて来ましたが、やはり理想の撮影や正確な点検を行うには手動操作がメインになります。
・モード1・モード2
手動操作は大きく「モード1・モード2」に分かれます。
各操作は以下の通りです。
モード1
左手:前進・後退(エレベーター)、回転(ラダー)
右手:上昇・下降(スロットル)、左右(エルロン)
モード2
右手:前進・後退(エレベーター)、左右(エルロン)
左手:上昇・下降(スロットル)、回転(ラダー)
※市販されているドローンの多くは、デフォルトで「モード2」に設定されていることが多いので、飛行前に操作方法の設定確認を忘れずに。
・各モードの特徴・用途
モード1:移動操作が両手で分かれているので、覚える・慣れるまでが大変ですが、操作を間違えてしまった時に、大幅な進路の乱れが起きにくいです。
慣れてくれば、左手の前進を右手の左右で調整するなど、正確な飛行を行うのに向いています。
一時期、農業用ドローンは設定上「モード1しか使用できない」と言われたこともありましたが、現在は技術の進歩や大手メーカーも参入してきたおかげでその壁はなくなりました。
モード2:移動操作が右手にすべて集まっており、覚えやすいため初めての操作でモード2を選ぶ方が増えています。
移動がすべて右手で行えるため、直感的な操作で思い通りの空撮が可能ですが、自由が効きすぎるため力んでしまうと斜め操作で予期せぬ方向への操作ミス、必要以上の加速を行ってしまう可能性があります。
モード2はその直感操作ゆえに「FPV」や「ドローンレース」など、より高速でアクロバティックな飛行も可能なため、資格取得だけでなく、その先の活用を見出したい方におすすめの操作方法です。
・メーカー、国で決まってる?
ここまでご紹介したモード1・2はドローンメーカーや国で決められていることはありません。
基本的には自分の性格や用途に合った操作方法を選択してください。
注意点はこの「モード」と呼ばれる操作方法はメーカーにより名称が異なる場合がありますので、必ず事前に説明書やホームページで操作方法を確認してください。
(例:DJI=モード1・2、Parrot=スペシャル・クラシック など)
なにより、自分に合っていない操作を選んでしまうと向き・速度・距離感の他、自分がどんな操作をしたいのか・操作しているのかがわからなくなってしまい、事故の原因となります。
国家資格を取るならどっち?
やはり1番気になるのは「どちらのモードが国家資格に受かりやすいか」ですよね。
国家資格取得にあたっては、モードはどちらでもOKです。
モードの変化によって合否が変わることもないのでご安心ください。
講師も務める筆者はあくまで個人的に「モード2」をおすすめします。
将来の空撮は置いておいて、国家資格講習の中で自動車教習のひとつである「S字走行」のように、常に進みながら回転させ続ける「8の字飛行」という項目があります。
この8の字飛行は減点を取られないよう、できるだけ滑らかに速度と回転を維持する必要があるのですが、この操作がモード1だと「前進+回転」を左手のみで行わなければいけないため難易度が高くなります。
モード2であれば、前進は右手、回転は左手で作業を分担できるので負担を減らすことができます。
空撮技術よりも、「丁寧に・正確に」進行することが今回の国家資格では求められるので、無理なく確実に合格できる方法を選びましょう。
職業で決まってる?
職業によりモードが固定されることは現状ほとんどありません。
自動車免許のように、運転方法は共通で右ハンドル・左ハンドルを選べるようなものです。
先述のように、一時期農業用ドローンはモード1と言われたことがありますが、各メーカーのアプリ・技術が発達してきた現在はモードの垣根はなくなりました。
業務利用で社内の複数人で利用する場合は、設定切り替えミスは引き継ぎがしやすいよう統一することはありますが、基本的には自分がミスなく操作できる方を選択してください。
FPV・レース用はもっと難しい
操作方法は分野問わず共通ではあるものの、中でも特殊なのが「FPV」や「ドローンレース」です。
FPVは「First Person View」=一人称視点のことで、手元のモニターではなく空撮映像が表示されているゴーグルをかけて操作する分野のことです。
まさに鳥の目のような感覚で飛行でき、車の運転のようにより近くにドローン・カメラを感じることができます。
最近ではDJIが「Avata2」を発売するなど、一般のユーザーでも触れやすくなってきました。
しかし、迫力があって楽しい反面、周囲の状況が確認しづらいため注意が必要です。
まず、機体を直接目視しないため「目視外飛行」に該当し、専用の練習と申請が必要になります。
また、レース用や建物の隙間をすり抜けるようなドローンは軽量化のために各種センサーを搭載していない場合もあるため、水平の位置情報だけでなく、高度も常に自分で維持させつづける必要があります。
高度の維持はモード1・2共通でかなり難易度が高くなります。
センサーを切った状態は一般向けのドローンでは設定ができないことが多いため、FPVやドローンレースは操作が慣れてきた後に始めることをおすすめします。
ドローンマスターズスクールは秋葉原で運営している「FPVドローンスクール」と提携しておりますので、気になる方はぜひお問い合わせください。
良い練習方法
手動操作をマスターするためにおすすめの練習方法は以下の通りです。
①ドローンの挙動・向きを把握する
まずは無理に移動せず、ドローン本来の挙動に慣れましょう。
スティックをどのくらい倒したらどのくらいのスピードで動くのか、
ホバリング中(空中停止)の揺れはどの程度か、
特に覚えなければならないのが「方向感覚」です。
ドローンは車・自転車と違い、移動する際に自分(操縦者)の体と一緒に視点が変わらないため、方向感覚が掴みづらいです。
常に心がけてほしいのが、操縦者は「ドローンにとっての前後左右」を操作していることです。
特にカメラが自分の方を向いているとパッと見の操作がすべて逆方向になるので注意が必要です。
観光やホームビデオで記念撮影をする時には必ず発生する向きですので、移動の練習を始める前に必須の確認項目です。
②移動の操作は一定のペースで
ドローンの挙動が把握できたら、移動の練習を始めましょう。
移動で心掛けるのは「速度を一定のペースに保つこと」です。
どのくらいの速度がいいのかは決められていませんが、まずは「自分が制御できる速度」を目指しましょう。
ドローンレースやFPVなど、高速度帯を求められる現場を除き、一般的な空撮では速度は必要ないため、コントローラの目盛1つ分くらいから始めることをおすすめします。
③距離感の把握
速度の管理に慣れてきたら最後に距離感を覚えましょう。
距離感の把握に広大な広さは必要ありません。
民営の練習場やドローンスクールのコートをレンタルできれば十分です。
マットやカラーコーンを一定の距離で配置して、まずは目線の高さで目視でその上空に移動させます。
移動後に自分の目測と実際の誤差を確認して修正、これを繰り返します。
慣れてきたら徐々に高度を上げていき、5mほどで距離感が把握できれば十分です。
実際空撮してみると、人物を写すには5〜10mほどで十分な距離です。
また、将来一等資格を目指す時にも、センサーオフで目視で最大3.5mまで上昇しますので、自然と国家資格に向けた練習にもなります。
④空撮の動きを練習
基本操作や距離感に慣れてきたら、空撮の動きを練習しましょう。
と言っても、どんな動きをすればいいかわからないと思います。
まずはドローンに備わっている自動飛行の動きをマネしてみましょう。
例えばDJI製品なら「クイックショット」と呼ばれる、被写体をロックしたあと被写体を中心に円を描いてくれる「サークル」や、後退しながら高度を上げて被写体と後ろの景色を広大に写す「ドローニー」、常に被写体の横に付き一定の距離を保って追尾してくれる「アクティブトラック」など、シンプルな動きでもドローンらしい撮影ができる自動機能が搭載されています。
便利な機能ではありますが、機械的な動きなので映像がシンプルすぎて映像に使いづらかったり、表現が蛋白になりがちです。
そこで、自分でこれらの動きができるようになれば、複数の動きを組み合わせることができるので、自然と操縦スキルも上がっていき、映像表現の幅も広がります。
※飛行の練習をする際は所定の手続きを済ませたうえで行ってください。
以上がドローンの手動操作方法の復習でした。
一等資格やレベル4飛行の実現で自動飛行の話を徐々に聞くようになってきましたが、まだまだ手動飛行がメインの時代が続きますので、突然の依頼がきても困ることがないよう、基本操作は抑えておきましょう。
【自動飛行】
続いて、自動飛行の操作方法や活用の場、メリット・デメリットをご紹介します。
メリット
自動飛行はアプリやクラウドソフト上であらかじめ飛行経路を保存することができるため、
正確な飛行を繰り返し行うことができます。
経路設定もプログラミングのように複雑なものは必要なく、マップ上をタッチして通りたい経路、カメラの角度、農薬の量などを指定できるので、機械が苦手な方や高齢の方でも導入しやすいメリットがあります。
特に農業・物流分野での活用が注目されており、地図上で離着陸地点や面積を指定するだけで最も効率がいい経路を自動で作成して保存してくれます。
デメリット
自動で正確な飛行を繰り返してくれるのが良いところではありますが、その設定は人の手で行います。人の手で行う以上、次のようなミスが重なって危険が伴う可能性があります。
①障害物の認識不足
マップで表示されるのはあくまで衛星写真やネット経由で入手した地図のみのため、
どこまでも平面に見えてしまいます。
そのまま設定すると、高い木の枝や建築物に接触する危険性があるため、事前のロケハンを行いましょう。
②数字の入力ミス
現在のドローンは高性能ゆえに数メートルから数センチ単位で設定が可能です。
細かな数字をタッチ操作で入力することが多いため押し間違いで予定を超過する数字にならないよう注意しましょう。
③ネット環境がないと最大限発揮できない
メリット部分で挙げたように、飛行経路はアプリやソフト上で管理しています。
データをあらかじめダウンロードすれば飛行は可能ですが、現地で新しく経路設定する際は地図情報の取得などでネット環境が必要になります。
ポケットWi-Fiやスマホのテザリングで十分対応可能なので、できるだけネットが使える環境での導入をおすすめします。山間部での飛行は特に注意が必要です。
各分野での自動飛行の種類
空撮:クイックショット(DJI)
クイックショットはDJIのアプリで使用できる、撮影をサポートしてくれる機能です。
本来は複合的な操作で難しい撮影も被写体をロックするだけで映画やテレビのような動画を収めてくれます。
操作方法は次に紹介する各動作を選んで被写体をタッチするだけ。
あとは自動で撮影して自動で帰ってきてくれます。
①ドローニー
ドローニーは後退しながら上昇し、カメラは自動で被写体を捉えつづけてくれます。
旅番組でよく見る動きを再現してくれます。
移動距離も任意で設定可能で、低空で記念動画を狙ったり、上空で景色を広大に見せることもできます。
②サークル
サークルは設定した場所・距離をキープして、被写体の周りを一周してくれる機能です。
本来は横移動しながら回転を操作する難しいスキルですが、アプリを使えば簡単に撮れちゃいます。
お子さんや車など、ホームビデオのひとつとして人気の設定です。
③アクティブトラック
アクティブトラックは一定の行動を繰り返すのではなく、被写体に設定した距離を保ったまま自動で追尾してくれる機能です。
最近のモデルでは、後方からだけでなく被写体の前後左右どの方向に付き添って追尾するかも指定できるようになりました。
人だけでなく、車や自転車も指定可能のため、ヘリに変わって大活躍の機能です。
自由度が高い分、障害物に接触する可能性も増えますので、使用する際は特に注意してください。
DJIの自動飛行機能は他にもパノラマや、動画撮影まで行ってくれるマスターショットも搭載されているので、気になる方はぜひお試しください。
農薬散布
農薬散布機の操作方法はさほど難しくはありません。
画面上で散布予定の敷地を指定し、面積を自動計算。
散布予定の農薬量と合わせて計算して、効率の良い飛行経路を算出してくれます。
障害物や農薬の濃度を確認し、問題なければ「スタート」を押すだけ。
散布中は予定経路と誤差がないか見守るだけでOKです。
もちろんトラブルがあった際は手動操作に切り替えることもできるので、危険性を抑えるとができます。
物流
物流も基本的には農薬散布と同様、マップ上で経路を指定して問題がなければスタートするだけです。
最新の物流ドローンは飛行距離が約20kmにもおよび、山間部などの人や車が入れないエリアにも問題なく輸送可能です。
農業用と少し異なるのは、DJIの物流用の場合、1台のドローンに2台のコントローラを接続し、電波が途切れ始めた時に操作を交代することで行方不明や墜落の危険性を減らすことができます。
もちろん物流の飛行経路も保存しておくことができるので、過疎地域への物資輸送や、災害時の緊急性が求められる時に素早く正確な運用が可能です。
ドローンショー
新たなドローンのエンタメで注目されているのがドローンショーです。
数百機~千数百機のドローンを同時に飛行させ、空中に様々な模様を描きます。
花火と異なり、好きな模様を好きな時間空中に見せることができるという利点から、観光施設や花火大会の一環として爆発的に登場回数が増えています。
この大量のドローンを制御しているのは数台のパソコンだけです。
3DCGで模様を管理するパソコン、ドローンと模様の接続を管理するパソコン、異常事態などを管理するパソコンなど、手動操作を使わずすべてパソコンだけで管理しています。
記憶に新しいのは東京オリンピック開会式のドローンショーで、インテルが1824機を使って夜空にピクトグラムを表現しました。
制御に使うプログラムは各社で異なりますので、詳しくご紹介することはできませんが、手動ではできない表現が詰まった最先端技術なので、ドローン活用の新たな手法のひとつとなりました。
教育用プログラミング
ドローンの自動操縦は屋外現場だけでなく、子供の教育現場のひとつとしても活用可能です。
近年、トイドローンの中でも「ブロックプログラミング」で操作できるモデルも増えてきており、プログラミング教室の一環でドローンを取り入れる会社も増えてきました。
ブロックプログラミングは「前Om」「左Om」のようにドローンの動きに合わせた命令が書かれたブロックが用意されており、それを飛行させたい順番につなげていき、スタートさせるとその通りに動いてくれるというシンプルな構造です。
学校ではイラストを動かすなど、平面的な動きだけになってしまいますがドローンの場合は高度も変更でき、立体的な構造をイメージする練習にもなります。
ドローンを使ったプログラミングを習うことにより、ドローン・プログラム、どちらの入口にもなり、手動操作に興味を持ったり、プログラムの技術を磨きドローンショーのデザインを手がけるきっかけになるなど、将来の進路を広げることにもつながります。
以上、今回はドローンの操作方法を各分野別にご紹介しました。
車は軽自動車から工事用まで基本的な運転方法は共通ですが、ドローンは同じ構造でも操作方法が多岐にわたります。
一見すると覚えることが多く大変そうに見えますが、だからこそ空撮・点検に活かしたいなら手動、デザイン・プログラムを活かしたいなら自動など、なにが自分にあっているのか見極めて、得意な分野でスキルを伸ばすことができます。
ドローンを活用できる用途はまだまだ未知数ですので、国家資格に限らず気になる分野、やってみたいことがあればぜひ挑戦してみてください。
ドローンマスターズスクールでは、国家資格取得のほか、空撮・点検・農薬散布など、ドローンの活用についてもサポート致します。
ご興味ある方はぜひ無料の説明会にご参加ください。