ドローン操縦士としてのキャリアを、次のステージへ引き上げる新しい制度、それが「レベル3.5」です。これまで目視外飛行の大きな制約だった「補助者」が原則不要になるこの制度は、ドローン活用の幅を広げ、操縦士に求められるスキルセットを大きく変えようとしています。この記事では、知っておきたい「レベル3.5」の全容と、それが自身のスキルやキャリアにどう直結するのかを、解説します。
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この記事で分かること
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目次
3.レベル3.5で何が変わる?補助者なし飛行のメリットと増大する操縦士の責任
4-1.条件①: 国家資格(一等/二等)- あなたのキャリアプランに最適な選択は?
4-2.条件②: 第二種機体認証 - 「信頼できる相棒」の証明機上カメラ付き機体 - 機上カメラによる歩行者等の有無の確認
4-3.条件③: 第三者賠償責任保険 - プロとしての信頼の証
5-3.Step 3: 専門分野(点検・測量・物流等)の確立
6.クライアントを納得させるレベル3.5のビジネス価値提案術
7.事業責任者の必須スキル!レベル3.5申請プロセスの全体像
1.レベル3.5飛行とは?ドローン活用の新たなステージ

「レベル3.5飛行」とは、2023年12月に国土交通省によって新設されたドローンの新たな飛行カテゴリーです。これまで、人がいない地帯での目視外飛行(レベル3飛行)では、安全を確保するために補助者を配置したり、看板を設置したりといった「立入管理措置」が必須でした。
レベル3.5は、この物理的な立入管理措置を、特定の条件下で「原則不要」とする画期的な制度です。具体的には、ドローンに搭載されたカメラ(機上カメラ)等による安全確認を前提として、これまで現場に配置していた人員や設備なしに、道路や鉄道の横断、広範囲のインフラ点検などが可能になります。
国土交通省は、この制度新設の目的を「ドローン活用の更なる円滑化」としており※1、まさにドローンビジネスの経済性と効率性を飛躍的に高めるための重要な一歩と言えるでしょう。これは、操縦士がより自律的に、かつ高度な判断を下しながら業務を遂行する、新しい時代の幕開けを意味しています。
2.なぜ今「レベル3.5」がプロのキャリアの転換点なのか?

ドローン操縦士として仕事をする上で、国の定める「飛行レベル」の理解は、重要な基礎知識です。これは、ドローンがどのような場所・方法で飛行できるかを示す、技術的な成熟度を表す4段階の指標です。
- レベル1: 目視内での手動操縦
- レベル2: 目視内での自動/自律飛行
- レベル3: 無人地帯における目視外飛行(補助者による立入管理措置が必要)
- レベル4: 有人地帯(第三者上空)における目視外飛行
これまで、山奥の送電線点検のような「レベル3」飛行では、安全確保のための補助者や看板の設置が不可欠でした。しかし、この「立入管理措置」がコストや手間の面で大きな課題となっていました。「レベル3.5」は、この課題を解決することで、ドローンビジネスの経済性を大きく向上させます。これにより、補助者に頼らず単独で業務を完遂できる、市場価値の高いプロフェッショナルへの需要が急速に高まっているのです。
3.レベル3.5で何が変わる?補助者なし飛行のメリットと増大する操縦士の責任

レベル3.5を理解する鍵は、「立入管理措置(補助者の配置など)の原則不要化※1」にあります。これは、操縦士のスキルと責任が、これまで以上に重要になることを意味します。
従来のレベル3飛行では、補助者が「第二の目」の役割を担っていました。しかしレベル3.5では、操縦士が機体に搭載されたカメラ映像などを頼りに、一人で周囲の安全確認と操縦を完結させなければなりません。これは、より高度な判断力とリスク管理能力が求められる、プロフェッショナルな領域です。
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比較項目 |
従来のレベル3飛行 |
レベル3.5飛行 |
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補助者の配置 |
必須 |
原則不要 |
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安全確保の手段 |
物理的な監視(人、看板) |
デジタル技術の活用(機上カメラ等での状況判断) |
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道路・鉄道の横断 |
原則、一時停止が必要 |
一時停止不要(安全が確認できれば横断可能) |
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求められる操縦士の能力 |
補助者との連携、物理的な現場管理能力 |
高度なリスク評価能力、デジタル情報に基づく単独での意思決定能力 |
高度なスキルで補助者不要を実現できる操縦士は、クライアントにとってコスト削減と機動力を両立させる貴重な存在です。そのため、レベル3.5に対応できる人材の需要は今後ますます高まっていくでしょう。
4.レベル3.5操縦士になるための3つの条件

では、この新しい時代の要請に応えるプロフェッショナルになるためには、何をクリアすればよいのでしょうか。レベル3.5飛行を実現するには、操縦士の「技量」、機体による「安全確保」、そして万が一の「備え」の以下3つの条件が必要です。※2
4-1.条件①: 国家資格(一等/二等)- あなたのキャリアプランに最適な選択は?
最も重要なのが、一等または二等の無人航空機操縦者技能証明(国家資格)のを取得することです。民間資格だけでは、レベル3.5飛行のスタートラインに立つことすらできません。
国家資格は、単なる許可証ではありません。それは、補助者がいない環境でも安全を確保できる高度な知識と技術を持つことの公的な証明です。しかし、「どちらの資格を取るべきか」はあなたのキャリアプランによって変わります。
- 二等無人航空機操縦士: レベル3.5飛行の実現に十分な資格です。まずは補助者なし目視外飛行をマスターし、点検や測量、物流分野で実績を積みたいと考えるなら、二等資格の取得が最も現実的で効率的な選択肢となります。
- 一等無人航空機操縦士: レベル3.5飛行はもちろん、その先の「レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)」を見据えた最上位資格です。将来的により難易度の高い都市部での業務や、企業のドローン事業責任者といったポジションを目指すのであれば、一等資格は他者との強力な差別化要因となり、あなたのキャリアの可能性を最大化します。
4-2.条件②: 第二種機体認証 - 「信頼できる相棒」の証明機上カメラ付き機体 - 機上カメラによる歩行者等の有無の確認
レベル3.5飛行では、ドローンのカメラによる歩行者の有無の確認が必要です。国土交通省が定める安全基準への適合を証明する「第二種機体認証」を受けたドローンを使用する必要があります。
これは、いわばドローンの「車検」のようなものです。プロの操縦士としては、自分が使用する機体がどのような認証を受けているのか、その性能と限界を正確に把握しておく責任があります。クライアントに機体の安全性を説明する場面でも、この知識は必須となります。
機上カメラを使えば、操縦士は飛行経路下の状況をモニターでリアルタイムに確認でき、無人地帯の確保が効率的に行えます。これにより、地上側の立入管理措置が一部緩和され、安全性と運航のしやすさが両立します。
4-3.条件③: 第三者賠償責任保険 - プロとしての信頼の証
プロとして仕事をする上で、万が一の事故への備えは絶対条件です。レベル3.5飛行では、十分な補償能力を持つ第三者賠償責任保険への加入が義務付けられています。これは、クライアントからの信頼を得るためにも不可欠な要素であり、プロフェッショナルとしての自覚と責任の証と言えるでしょう。
5.レベル3.5時代を勝ち抜くためのキャリアロードマップ

資格取得はゴールではなく、プロとしてのキャリアのスタート地点です。レベル3.5スキルを活かして市場価値の高い操縦士になるための、具体的なステップを見ていきましょう。
5-1.Step 1: 国家資格の取得と基礎技術の習熟
まずは国家資格(一等または二等)を取得し、法規や安全管理、高度な操縦技術の基礎を固めます。この段階で、目視外飛行におけるリスク評価や緊急時対応の思考プロセスを徹底的に体に叩き込むことが重要です。
5-2.Step 2: 実務経験の積み方と実績作り
資格取得後は、積極的に実務経験を積みます。最初は小規模な案件や、経験豊富な操縦士のアシスタントからでも構いません。重要なのは「レベル3.5で飛行した実績」を積むことです。飛行ログや業務報告書を整理し、自身のスキルを客観的に証明できるポートフォリオを構築します。
5-3.Step 3: 専門分野(点検・測量・物流等)の確立
多様な経験を積んだ後は、自身の専門分野を確立します。「インフラ点検のプロ」「精密測量のスペシャリスト」「山間部物流のエキスパート」など、特定の領域に特化することで、あなたの市場価値はさらに高まります。業界知識を深め、その分野特有の課題をドローンで解決できる人材を目指しましょう。
6.クライアントを納得させるレベル3.5のビジネス価値提案術

あなたがレベル3.5のスキルを身につけたとして、それをクライアントにどうアピールすればよいでしょうか。重要なのは、クライアントのビジネスにどのようなメリットがあるかを具体的に示すことです。
例えば、クライアントに「レベル3.5で何ができるのですか」と聞かれた際は、次のように答えることができます。 「これまで補助者を2名配置していた長距離の点検業務が、私一人で可能になります。これにより、例えば補助者2名分の人件費を直接削減できます。また、従来は迂回が必要だった道路を横断して直線的に飛行できるため、作業時間を30%短縮し、より迅速な報告が可能になります。」
このように、具体的な数字を交えてコスト削減や効率化のメリットを提示することで、クライアントはあなたのスキルの価値を明確に理解し、発注に繋がりやすくなります。レベル3.5の知識は、あなたの提案力を高める有効な手段になります。
7.事業責任者の必須スキル!レベル3.5申請プロセスの全体像

将来、独立したり、企業内でドローン事業の責任者を目指す場合は、許可・承認の申請プロセスも自分で理解しておくことが大切です。申請は「ドローン情報基盤システム(DIPS 2.0)」を通じて行います。※3
7-1.申請フローの全体像
- 事前準備: 操縦者ライセンス、機体認証、保険の情報、そして最も重要な「飛行マニュアル」を準備します。
- DIPSでの申請: システムにログインし、飛行目的、経路、使用機体などの情報を入力します。
- 飛行マニュアルの添付: レベル3.5飛行の具体的な安全対策を記述したマニュアルを添付します。
- 提出・審査: 提出後、航空局による審査が行われます。
7-2.合否を分ける「飛行マニュアル」作成の3つのポイント
申請の成否は、この飛行マニュアルの質が大きく影響します。特に以下の3点は明確に記述する必要があります。
- 機上カメラによる安全確認の具体的手順: 「どのように映像を監視し、歩行者や車両がいないことを確認するか」のプロセスを具体的に記述します。
- 緊急時の対応フロー: 電波ロスト、GPSロスト、機体の不具合、急な天候悪化など、想定されるインシデントごとに、具体的な対応手順を明記します。
- 飛行中止の判断基準: 「風速がXXm/sを超えた場合」「監視モニターの視認性が確保できなくなった場合」など、安全を最優先し、飛行を中止する客観的な基準を定めます。
これらのプロセスを深く理解し、質の高いマニュアルを作成することは、審査をスムーズに進めるだけでなく、実際の現場でプロジェクトを安全かつ確実に成功させるための「強固な土台」となります。
ただし、飛行マニュアルを一から作成するのは大変なため、国土交通省が用意している 航空局標準マニュアル(機上カメラ装置により立入管理措置をとる目視外飛行-「レベル3.5飛行」等-)を利用すると良いでしょう。
8.Q&A: これからプロを目指す方の疑問に答えます

8-1.Q1. レベル3.5の仕事は、二等資格でも十分に対応できますか?
A1. はい、制度上は二等資格でレベル3.5飛行が可能です。インフラ点検や測量、物流など多くの業務は二等資格で対応できます。ただし、将来的にレベル4飛行(有人地帯上空)が関わる都市部での業務などを目指す場合は、一等資格の取得が大きな強みとなります。
8-2.Q2. 未経験からでもプロになれますか?資格取得にかかる費用や期間の目安は?
A2. はい、未経験からプロを目指すことは十分可能です。多くの方が未経験から学習をスタートしています。資格取得にかかる費用や期間はスクールやコースによって異なりますが、一般的には数十万円からで、期間は数週間程度が目安です。重要なのは、資格取得後の継続的な学習と実践です。
8-3.Q3. 資格を取った後、すぐにレベル3.5の仕事ができますか?
A3. 資格取得はプロとしてのスタートラインです。実際の現場では、さまざまな状況判断が求められます。資格取得後も、継続的に操縦技術を磨き、経験を積むことが非常に重要です。ドローンマスターズスクールでは、卒業生がいつでも無料で操縦訓練ができるアフターフォロー制度を用意しており、あなたのスキル維持を永続的にサポートします。
9.まとめ:次世代のプロフェッショナルとして羽ばたくために
ドローンの「レベル3.5」は、単なる技術的な進歩ではありません。それは、プロのドローン操縦士に新たな役割と責任、そして大きな可能性を与える、キャリアの転換点です。この変化の波に乗り、自身の市場価値を大きく高めるためには、戦略的な国家資格の取得と、その先のキャリアプランを見据えた継続的な学習が不可欠です。この記事が、あなたが次世代のプロフェッショナルとして羽ばたくための、確かな一歩となることを願っています。
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参照・引用元一覧
- ドローンのレベル3.5飛行制度の新設について - 国土交通省 - https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001716111.pdf
- レベル3.5飛行の許可・承認申請について - 国土交通省 - https://www.mlit.go.jp/koku/content/001725836.pdf
- ドローン情報基盤システム(DIPS 2.0) 操作マニュアル - 国土交通省 https://www.uafp.dips.mlit.go.jp/contents/req-appl/preview/11.DIPS-Manual_FPA_JP_New-Registration_Lv.3.5.pdf









