ドローンの性能を最大限に引き出し、安全に楽しむためには、バッテリーの正しい知識が不可欠です。この記事では、バッテリーに関する疑問や不安の解消に役立つ情報を提供します。
目次
4-5. 定期的な慣らし運転:新品バッテリーの性能を引き出す
1. まずは知っておきたい!ドローンバッテリーの主な種類と特徴

ドローンの心臓部ともいえるバッテリー。現在、主流となっているのは「リポバッテリー」と「リチウムイオンバッテリー」の2種類です。※1それぞれの特性を理解することが、あなたに最適なドローンライフの第一歩となります。
1-1. リポバッテリー (リチウムポリマーバッテリー)
多くのドローン、特にFPVドローンやレース用ドローンで採用されているのがリポバッテリーです。
- メリット: 最大の特長は、高い瞬発力(放電能力)です。アクセルを急に開けて一気に上昇したり、高速でアクロバティックな飛行をしたりする際に必要な大きなパワーを瞬時に供給できます。また、形状の自由度が高く、軽量な点も魅力です。
- デメリット: 一方で、スマートフォンなどに使われるリチウムイオンバッテリーに比べてデリケートな側面も。過充電や過放電(バッテリーを使いすぎること)に弱く、物理的な衝撃にも注意が必要です。取り扱いを誤ると、膨張や発火のリスクが相対的に高まります。
1-2. リチウムイオンバッテリー
DJI製の空撮用ドローンなど、多くのコンシューマー向けドローンで採用されています。
- メリット: 一般的にリポバッテリーに比べ、エネルギー密度が高い傾向があります。これは「同じ重さなら、より多くの電気を蓄えられる」ということで、長時間の飛行が可能になります。また、一般的にリポバッテリーよりも安全性が高く、管理がしやすいインテリジェントバッテリーシステムが組み込まれていることが多いです。
- デメリット: 瞬発力ではリポバッテリーに一歩譲ります。そのため、極端な急加速や急旋回を繰り返すようなフライトにはあまり向きません。
【比較表:リポ vs リチウムイオン】
|
特徴 |
リポバッテリー |
リチウムイオンバッテリー |
|
瞬発力 |
◎ |
〇 |
|
飛行時間 |
〇 |
◎ |
|
安全性 |
△ |
〇 |
|
管理のしやすさ |
△ |
〇 |
|
主な用途 |
FPV、レース、ホビー |
空撮、産業用 |
2. 【最重要】PSEマークはなぜ必要?あなたの安全を守るための必須知識

バッテリーを選ぶ上で、安全性を確認する重要な基準の一つが「PSEマーク」の有無です。
2-1. PSEマークとは?
PSEマークは、日本の「電気用品安全法」※2という法律で定められた安全基準を満たしていることを証明するマークです。リチウムイオンバッテリーは、2019年2月からこの法律の規制対象となりました。つまり、PSEマークのないリチウムイオンバッテリー(ドローン用バッテリーを含む)を日本国内で販売することは、法律で禁止されています。
2-2. なぜそこまで重要なのか?
マークのない製品は、国の定める安全基準を満たしていない可能性があります。それは、充電中に発火する、飛行中に突然電源が落ちる、といった重大な事故に直結するリスクを抱えているということです。あなたの大切なドローンと、周囲の安全を守るため、価格の安さだけで選ぶのではなく、必ずPSEマークが表示されている製品を選んでください。これは、賢い消費者としての自己防衛策でもあります。
3. 後悔しない!あなたに最適なバッテリーの選び方

バッテリーの種類と安全基準を理解したところで、次は「あなたにとって」最適なバッテリーを選んでいきましょう。
3-1. 初心者・ホビーユーザーの方へ
まずは「純正品」を選ぶのが最も確実で安心な選択です。純正品は、そのドローンの性能を最大限に引き出せるように設計されており、安全性や保証の面でも信頼できます。 もし、価格面から互換バッテリーを検討する場合は、以下の3点を必ずチェックしてください。
- PSEマークがついているか
- 販売者の評価やレビューが信頼できるか
- 対応機種が明確に記載されているか
3-2. プロ・業務利用の方へ
業務での利用は、飛行時間が直接的に成果や収益に関わります。そのため、信頼性とパフォーマンスが最優先です。基本的には純正品、特に長時間フライトを可能にする大容量バッテリーが推奨されます。 互換品を導入する場合は、コスト削減のメリットだけでなく、万が一のトラブルが業務に与える影響(墜落による機材損失、信用の失墜など)を天秤にかけ、慎重に判断する必要があります。実績のあるサードパーティメーカーの製品を、十分なテストを経てから導入することを推奨します。
3-3. 組織の管理者の方へ
複数のドローンとバッテリーを管理する立場であれば、安全性と運用効率の両立が課題となります。個々のバッテリー性能だけでなく、ロット管理のしやすさ、メーカーのサポート体制、そして何よりも全従業員が安全に取り扱えるような製品を選ぶことが重要です。PSEマークの徹底はもちろん、従業員への安全教育もセットで考えましょう。
4. バッテリーの寿命を延ばすために。プロが実践する5つの工夫

高価なドローンバッテリー、できるだけ長く使いたいですよね。実は、日々の少しの工夫でバッテリーの寿命は大きく変わります。ここでは、プロが現場で実践している5つのコツをご紹介します。
4-1. 適切な充電:腹八分目を心がける
バッテリーにとって最も負担が大きいのは「満充電」と「完全放電(過放電)」の状態です。
- 過充電を避ける: 多くのインテリジェントバッテリーは過充電防止機能がついていますが、充電が終わったら速やかに充電器から外すのが基本です。満充電のまま放置すると、バッテリー内部に負荷がかかり続けます。
- 過放電を避ける: バッテリーが空になるまで飛行させることは、過放電につながるため避けてください。多くのメーカーは残量20〜30%での帰還を推奨しています。これは安全マージンであると同時に、バッテリーを保護するためでもあります。
4-2. 最適な保管:バッテリーにも快適な環境を
バッテリーは精密な化学製品です。特に長期保管する際は、以下の環境を整えることで劣化を大幅に防げます。
- 保管時の充電量: 40〜60%が理想です。これは「ストレージ充電」とも呼ばれ、バッテリーが最も安定する状態です。DJI製のインテリジェントバッテリーには、数日経つと自動でこの状態まで放電してくれる機能が備わっています。
- 保管場所: 直射日光が当たる場所や車内など、高温になる場所は厳禁です。15℃〜25℃程度の涼しく乾燥した場所に、専用の防爆バッグ(セーフティーバッグ)に入れて保管するのが最も安全です。
4-3. 丁寧な使用:急な動きはバッテリーにも負担
人間が急に全力疾走すると心臓に負担がかかるように、ドローンも急加速や急上昇を繰り返すとバッテリーに大きな負荷がかかります。特に離陸直後やバッテリー残量が少ない時は、スムーズな操作を心がけることで、バッテリーへの負担を軽減できます。
4-4. 衝撃からの保護:見た目ではわからない内部損傷
墜落や衝突のほか、持ち運び中に落とした場合にも注意が必要です。外装に傷がなくても、内部で損傷が起きている可能性があります。強い衝撃を与えてしまったバッテリーは、異常がないか慎重に確認し、少しでも違和感がある場合は、使用を中止してください。
4-5. 定期的な慣らし運転:新品バッテリーの性能を引き出す
新品バッテリーは、内部の化学物質が安定していません。そこで、最初の3〜5回のフライトでは、①満充電にする → ②急加速や急上昇を避け、ホバリングやゆっくりとした飛行で残量20%程度まで使用する → ③再度満充電にする、というサイクルを繰り返します。これによりバッテリーセルが活性化し、最大飛行時間の向上と寿命の安定化に繋がります。
5. これが出たら交換のサイン!バッテリーの寿命と交換タイミング

「まだ使えるかも?」と劣化したバッテリーを使い続けるのは、墜落のリスクを抱えて飛ぶのと同じです。ここでは、交換すべき明確なサインをご紹介します。
5-1. 見た目でわかるサイン
- 明らかな膨らみ: 最も危険な兆候です。バッテリー内部でガスが発生している状態で、いつ破裂・発火してもおかしくありません。膨らんだバッテリーは使用せず、直ちに適切な方法で廃棄してください。
- 外装の破損・傷: 内部のセルが露出するような深い傷や破損がある場合も危険です。
- 端子の変色・破損: 充電や通電が不安定になり、飛行中に電源が落ちる原因となります。
5-2. 性能でわかるサイン
- 飛行時間の著しい低下: 新品時に比べて飛行時間が7〜8割程度になったら、寿命が近いサインです。
- 充電しても満タンにならない: 充電器に長時間接続しても100%にならなかったり、すぐに充電が終わってしまったりする場合。
- アプリからの警告: DJI GO 4などのアプリでは、各セルの電圧バランスの異常などを検知し、警告を出してくれることがあります。この警告は必ず確認しましょう。
5-3. 使用回数での目安
多くのメーカーは、バッテリーの寿命の目安として「充電サイクル回数」を公表しています(例:200回など)。これはあくまで目安ですが、アプリなどで自身のバッテリーの充電回数を確認し、目安を超えている場合は交換を検討するのが賢明です。
5-4. 安全な廃棄方法
寿命を迎えたリチウムイオンバッテリーは、一般の家庭ごみとして捨てることはできません。発火・発煙の原因となり、大変危険です。
- JBRC協力店に持ち込む: 家電量販店やホームセンターなどに設置されている「小型充電式電池リサイクルBOX」で回収してもらえます。
- 自治体の回収ルールに従う: 自治体によっては、別途回収窓口を設けている場合があります。お住まいの地域のルールを確認してください。
廃棄する際は、ショートを防ぐためにバッテリーの端子部分をビニールテープなどで絶縁してから持ち込みましょう。
まとめ
正しいバッテリー知識は、安全で楽しいドローン体験の基盤です。種類を理解し、PSEマークで安全を確保し、あなたに合った製品を選びましょう。そして、日々の丁寧な扱いで寿命を延ばし、適切な時期に交換する。このサイクルが、あなたのドローンライフをより豊かで持続可能なものにしてくれます。
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参照・引用元一覧
- 古河電池株式会社: リポバッテリーとドローンに適する電池 - バッテリーメーカーによる専門的な技術解説
- 経済産業省: リチウムイオン蓄電池の規制対象化に関するFAQ - PSEマークに関する公式情報









