農業分野におけるドローン活用が急速に広がっています。人手不足や効率化が求められる現代農業において、ドローン技術は大きな可能性を秘めています。
本記事では基礎知識から実践的な導入方法、必要な資格まで網羅的に解説します。
目次
1.農業用ドローンとは?基礎知識と種類
2.農業用ドローン活用の具体的メリット
3.農業用ドローンの主な活用事例
3-1.水稲・麦作での活用
3-2.果樹園での活用
3-3.畑作・野菜栽培での活用
4.農業用ドローン導入に必要な資格と法規制
4-1.操縦に関する資格
4-2.飛行に関する許可・承認
5.農業用ドローン操縦技術の習得方法
5-1.ドローンマスターズスクールの農業特化コース
5-2.国家資格と専門資格の取得
6.農業用ドローン導入の費用と投資回収モデル
6-1.初期導入コスト
6-2.ランニングコスト
6-3.投資回収シミュレーション
7.まとめ
1.農業用ドローンとは?基礎知識と種類
農業用ドローンとは、農作業の効率化や精密化を目的として開発された無人航空機です。一般的なドローンと比べて、農薬散布機能や専用センサーを搭載し、農業に特化した設計がなされています。
主な種類は以下の3つに分けられます。
- 散布用ドローン:農薬や肥料の散布に特化したモデル。10〜30L程度のタンク容量を持ち、効率的な散布が可能。
- 撮影・センシング用ドローン:マルチスペクトルカメラやサーマルカメラを搭載し、作物の生育状況や病害虫の発生状況を可視化。データに基づく精密農業を実現。
- 複合型ドローン:散布機能とセンシング機能を両立させたモデル。高度な農場管理を可能にする。
農業用ドローンを選ぶ際のポイントは、散布能力(タンク容量、飛行時間、散布幅)、操作性、耐久性、アフターサポート体制などです。自分の農地規模や作物、用途に合わせた機種選定が重要です。
参考:
2.農業用ドローン活用の具体的メリット

2-1. 作業効率の大幅な向上
農業用ドローンの最大のメリットは作業時間の短縮です。農研機構によるスマート農業実証プロジェクトでは、農薬散布作業において平均で61%、最大で89%の作業時間短縮効果が確認されています。特に広大な農地や複数の圃場を管理する農家にとって、この時間短縮効果は人手不足解消に直結します。
例えば、1haあたりの水田での農薬散布作業時間を比較すると、
- 人力(背負い式動力噴霧器):約60分
- ドローン:約10分
これは年間の農繁期における労働負担の大幅な軽減につながります。
2-2. 薬剤使用量の削減と環境負荷軽減
ドローンによる精密散布は、従来の散布方法と比較して農薬使用量を30〜50%削減できるケースがあります。高度な噴霧技術により、必要な場所に必要な量だけを散布することが可能になり、環境への負荷を軽減しながらコスト削減も実現します。
2-3. 安全性の向上
特に中山間地域の急斜面など、人が立ち入るのが危険な場所でも、ドローンなら安全に作業が可能です。高温多湿の環境下での重労働による熱中症リスクも軽減できます。農業従事者の高齢化が進む中、身体的負担の軽減は非常に重要なメリットです。
2-4. データ駆動型農業の実現
センシング機能を活用することで、作物の生育状況や病害虫の発生状況をデータとして可視化できます。このデータに基づいた意思決定により、「感覚」や「経験」だけに頼らない科学的な農業経営が可能になります。例えば、生育ムラの発見と対策、病害虫の早期発見と局所的な対処などが実現し、収量・品質の向上につながります。
3.業用ドローンの主な活用事例
3-1.水稲・麦作での活用
水稲栽培では、広大な面積に均一に農薬散布を行う必要があります。ドローンを活用することで、従来の小型無人ヘリと比較して低コストで効率的な散布が可能になりました。特に除草剤や殺虫剤の散布に効果を発揮し、1日あたりの作業可能面積が大幅に拡大します。
また、生育診断用のカメラを搭載したドローンでは、生育状況のばらつきを可視化し、可変施肥(場所によって肥料の量を調整する技術)を実現することで、収量の安定化と品質向上を実現した事例も増えています。
3-2.果樹園での活用
果樹園では樹高が高く、従来は脚立を使った危険な作業が必要でした。ドローンを活用することで、高所の樹冠部への農薬散布が安全かつ効率的に行えるようになりました。特にモモやリンゴなどの果樹栽培では、病害虫対策が品質に直結するため、均一で漏れのない散布が可能なドローンの活用価値は高いと言えます。
3-3.畑作・野菜栽培での活用
広大な面積の畑作物では、ドローンによるセンシングで生育状況の差を見える化し、適切な対策を打つことができます。例えば、ジャガイモやタマネギなどの栽培では、生育不良箇所や病害虫発生箇所を早期に発見し、部分的な対策を講じることで、農薬使用量の削減と収量・品質の安定化を実現しています。
また、ブロッコリーやキャベツなどの露地野菜栽培では、定植後の生育状況モニタリングにドローンを活用し、収穫時期の予測精度を高める取り組みも進んでいます。
4.農業用ドローン導入に必要な資格と法規制
農業用ドローンを導入するにあたり、いくつかの資格や許可が必要になります。2024年以降の最新の規制状況を踏まえて解説します。
4-1.操縦に関する資格
ドローン操縦に関しては、2022年12月から国家資格「無人航空機操縦者技能証明制度(操縦ライセンス)」が始まりました。農業用ドローンは一般的にレベル2飛行(目視内での操縦)に該当し、この操縦自体には技能証明書の取得は必須ではありません。
ただし、農薬散布を行う場合には、以下の資格・許可が必要になります。
- 産業用マルチローターオペレーター技能認定証:ドローンを使用した農薬散布を行う場合、一般社団法人農林水産航空協会(農水協)の認定する資格が必要です。
- 農業ドローン技能認定証明:メーカーや機種によっては、特定の認定機関(UTCなど)が発行する技能認定証明が必要な場合があります。
4-2.飛行に関する許可・承認
農業用ドローンの飛行には、以下の許可・承認が必要です。
国土交通省への飛行許可申請:いわゆるDIPS(Drone/UAS Information Platform System)での申請が必要です。2023年7月の法改正により手続きが簡略化されましたが、以下のような条件の場所で飛行する場合は許可が必要です。
- 人口集中地区(DID)の上空
- 夜間での飛行
- 30m接近飛行
- 危険物輸送飛行
- 物件投下飛行
5.農業用ドローン操縦技術の習得方法
農業用ドローンの操縦技術を効率的に習得するには、専門のドローンスクールで体系的に学ぶことをおすすめします。特に農薬散布など専門技術を要する作業では、独学よりも確実に技術を身につけられる点が大きなメリットです。
5-1.ドローンマスターズスクールの農業特化コース
全国に展開するドローンマスターズスクールでは、農業用ドローンに特化したコースを提供しています。このコースでは、以下のような内容を学ぶことができます:
- 農業用ドローンの基礎知識と操縦技術
- 農薬散布に必要な知識と技術
- 関連法規や安全管理の知識
- 実際の農地での実習
特に注目すべき点は、卒業後のアフターフォローが充実している点です。卒業生は無料でドローンの操縦訓練を継続して受けることができ、技術の維持・向上をサポートしています。これは実践の場で確実に技術を発揮するために非常に重要なポイントです。